(8月2日付けの手紙)その3
夏休み前のとんでもない話は、これで終わります。
スレイ翁のところがあんまり楽しかったから、しっかり忘れてたんですが、私たちは、生徒会役員や男爵令嬢ズだけじゃなく、エリザベートさまを筆頭とする貴族のお嬢さまたちをほっぽり出してたんです。
そりゃあ、巨大なしっぺ返しがあるに決まってます。
気が付かない私も馬鹿だったけど、ジークは貴族なんだから、もっと空気を読んでよ!って言いたい気分でした。
とりあえず、ジークと二人で「ごめんなさい」しました。
男爵令嬢ズは、どさくさで生徒会役員の皆さまと仲良くやれたので、「エヴァだから仕方がない」と許してくれたんですが、エリザベートさまたちは、学園で最も重視されるべき自分たちが蔑ろにされたと言って、激怒されました。
で、皆さまの前で長いこと頭を下げて、嵐が治まるのを待ったんですが、何時まで経っても、嵐は止みません。
いい加減、疲れてきました。
「あなた、平民の分際でジークフリードさまと二人きりになろうだなんて、何を考えていますの?
ジークフリードさまは、公爵さまですのよ?」
エリザベートさまが、怒るのを初めて見ました。
よっぽど鬱憤が溜まっていたんでしょう。
取り巻きの三人も喚き散らします。
「エリザベートさまが、わざわざ足を運んでいらしたのに、ほっぽり出して勝手に行動するなんて、何て失礼な!」
「やっぱり平民ですわ。礼儀を知らないのよ!」
「平民は、貴族に譲るべきですわ!
今日のような場合、さりげなく、エリザベートさまとジークフリードさまの仲を取り持つことが期待されてますのに、勝手にジークフリードさまを連れ出すなんて!」
いやいやいや、私が連れ出したんじゃなく、ジークが付いて来ただけで……。なんて、言える訳もありません。
キンキン声で頭が痛くなりそうでした。
黙って頭を下げ続けるのにも飽きて、下からそっと見上げると、真っ赤な顔をした三人が目を三角にしてます。
これじゃあ、百年の恋も覚めそうです。
面倒くさいったら、ありゃしません。
そんなにジークと仲良くなりたいなら、「友達になって」って声を掛ければ良いのに。
そんなことを思っていたら、ケント会長が助け船をだしてくれたんです。
「まあまあ、所詮、平民には我々貴族の気持ちを汲むことはできないんだろう。
君たちの意向は、よく分かった。
今度、エリザベートさまや君たちを交えて、ジークと一緒にお茶でもしよう」
そう言うと、令嬢たちの攻撃が止みました。現金なものです。
でも、エリザベートさまもまんざらじゃないようで、彼女もジークやケント会長とお茶をしたかったことが分かりました。
だったら、自分から誘えよ!って叫ばなかった自分を褒めてやりたいです。
そんなこんなで、久しぶりにスレイ翁に会えて嬉しかったことも、ツノウサギの角をもらって嬉しかったことも、吹っ飛んでしまいました。
8月2日
いろんなことが分かって驚いている エヴァ
PS1 あの後、ケント会長がジークにエリザベートさまたちとのお茶会に出るよう言ったら、無茶苦茶嫌がってました。
ジークにとってスレイ翁に会えたことは一族の念願がかなったことになるので、無茶苦茶嬉しいんです。
そりゃあ、大っぴらに宣伝できることじゃないけど、当主の実績として誇れると思ってるはずです。
それなのに、ケント会長に、エリザベートさまたちに気を遣えって頭ごなしで叱られたんで、納得できないようでした。
でも、傍で見ていて、ケント会長は、エリザベートさまに気を遣うって言うより、自分が連れてってもらえなかったことにお怒りだったようです。
いくら幼馴染でも、そこまで一緒にいたいものでしょうか?
過保護だと思いませんか?
PS2 ツノウサギにもらった角を送ります。魔女に大事に使ってもらってください。
この角は、フォード先生には見せてません。こんなものがあるのを知ったら、「売ってくれ」って煩いと思うので。
エヴァは、ジークやケント会長をターゲットにする令嬢たちに嫌われます。




