(4月20日付けの手紙)その5
エヴァは、学園へ来て初めての薬草採取に出かけます。
お母さん
大成功でした。
自分を褒めてやりたい気分です。
学園前の道をイースレイと反対方向に進んだら、途中で道が左右に分かれていて、左に行くと湖があって生徒や町の人が遊びに行くデートスポットになっているんですって。
情報提供は、男爵令嬢ズです。
だから、右の道を進んで行ったんだけど、30分ほど歩いたら、熱さましに効く薬草や、下痢止めに効く薬草なんかがたくさんあったんです。
嬉しくって、大喜びで取って来ました。
でも、ちゃんと次が育つように、根こそぎ取るような馬鹿はしませんでした。ご安心ください。
帰り道で、来たときには気が付かなかったキイチゴを見つけました。
一つつまんで口に含むと、良い感じに熟しています。
何気なく見ると、脇道がありました。
ピンと来たので、その先へ進むと、ジャジャーン!
キイチゴの群生地がありました。
キイチゴも採取対象です。
パメラが上手にジャムにしてくれるんです。
できたジャムは、いつもは二人で山分けしているんですが、今年は、男爵令嬢ズにも分けてあげたいので、多めに収穫しました。
薬草もいっぱいあるし、キイチゴもたくさんあります。
噂に聞くマジックボックスが欲しくなりました。
あれって、空間魔法の応用ですよね。
今度、調べてみようと思います。
エッチラオッチラ、山のような戦利品を抱えて寮へ帰りました。
寮に着くと、ちょうど男爵令嬢ズもイースレイから帰って来てたので、パメラを呼び止めました。
「パメラ、お土産よ!」
って言ったら、袋の中のキイチゴを見たパメラが大喜びで抱き着いてきました。
「エヴァ、あなたって、最高だわ!
ねえ、みんな、エヴァがキイチゴ取ってきてくれたわ。
これでジャムができるわ!」
しばらく、大興奮のパメラをなだめるのが大変でした。
食べ物、特に甘いものに関しては、パメラは無敵です。
早速、担任のロックフィールド先生に厨房を借りれないか訊きに行き、先生の了解を得るや料理長と交渉し、休みの日の常で晩餐を食べる生徒が少ないこともあって厨房が空いているのを良いことに、隅でジャムを作り始めたんです。
晩餐なんか後回しです。
パメラの中での優先順位は、甘いものがダントツ一位なんです。
パメラが、キイチゴと格闘している横で、私は、ひたすら薬草を洗いました。
森の魔女が、単に採取しただけの薬草より一手間かけた薬草の方が、付加価値が付いて高く売れると言ってたを思い出したので、おばばの言う付加価値を付ける作業(洗って干す)をしたのです。
だって、採取した日はイースレイへ売りに行く時間なんかなかったし、翌日からは授業があって売りに行くことなんかできないんです。
そうするしかないでしょ?
厨房の隅でパメラがジャムを煮るのを横目で見ながら、ひたすら薬草を洗ってたら、料理人(多分、平民だと思われます)が、生徒が馬鹿なことをしてるなって感じでスルーしていました。
何しろ、忙しい晩餐準備の最中です。
パメラや私が何をしていようが、気にしている余裕なんかなかったんでしょう。
平素は、他の生徒から無視されて面白くないことも多いんですが、こういうときスルーされるのは、ありがたいです。
料理人の仕事の邪魔をしたくないですし、さすがに、薬草に付加価値をつけるために頑張ってるなんて言えませんから。
で、翌週、一人部屋のメリットを最大限に活用して処理した(干した)ものを薬局に売りに行ったら、な、なんと、ユーグレンで売るよりかなり高く売れたんです。
万歳!
何しろ、物価が違うんです。
村やユーグレンの物価と比べて、イースレイは3割ほど高いんです。だから、薬草だって高く売れるんです、
イヤッホイ!!!
やったね。って、気分です。
これからも、頑張って金儲けしますね!!!
4月18日
PS パメラのジャムは大好評でした。まず、味見した男爵令嬢ズに絶賛されました。ついでに、どさくさで味見の権利を勝ち取った料理長まで生徒の作品を褒めたんです。
ジャムは、その晩味見をし、翌朝の朝食で男爵令嬢ズと私の5人で食べ終えました。私たちは、がっついて食べたんです。
パメラに、「今度は、もっとたくさん取って来てちょうだい」って、お願いされましたが、パメラだけじゃなく、男爵令嬢ズ全員の総意のようです。
恐ろしいことに、料理長から、「今度キイチゴを取って来たら、売って欲しい」と申し入れがあったんです。
私としては、パメラのお願いを優先したいんですが、料理長に渡すとご飯が美味しくなりそうで、悩ましいところです。
エヴァとパメラが組むと無敵(!)です。