(4月20日付けの手紙)その3
今回は隣国の言葉、ホルムハウト語の授業の話です。
お母さん
年に何回か家へ薬草を買いに来る行商のおばちゃんがいたでしょう?私ぐらいの女の子(確か、「メイ」って名前でした)を連れていて、いつもお菓子をくれた人です。
確か、パピーさんって名前で、薬の行商をしている(我が家で仕入れた薬草を加工して、国中に売り歩いている)って言ってました。
パピーさんの他にも何人か行商やってるお得意さんがいましたね。
あの人たちはセクレド語じゃなく異国の言葉を話してましたが、あれって、ホルムハウト語だったんですね。
小さい頃からみんなに可愛がってもらってたから、普通に意思疎通できてたし、あのメイちゃんって女の子とも普通に遊べてたんだけど、あれがホルムハウト語だったなんて、今日授業を受けて初めて知りました。
ホルムハウト語は隣国の言葉ですので、お貴族さまは、みな読み書きできて当たり前なんですって。
でも、聴いたりしゃべったりするのが苦手な人もいるようで、今日、先生がテキストに書いてないことをホルムハウト語でお尋ねになったんですが、半数以上の人がお手上げのようでした。
それで、エリザベートさま辺りに答えていただけば良かったのに、趣味の悪いことに、平民の私に答えさせようとしたんです。
きっと、恥をかかせてやろうと思ったんでしょう。
本当に、貴族の発想って、腐ってます。
でも、私は、読み書きは『これから』ですが、行商の人たちやメイちゃんのおかげで、聞いたりしゃべったりすることはできるんです。
それで、何でもないような顔をして普通に答えたんです。
先生は、大絶賛。教科書どおりの堅苦しい言い回しじゃなく、ごく自然なホルムハウト語だと褒めてくれたんです。
貴族の皆さまの顔色が変わったのが分かりました。
「生意気な……」
って、声が聞こえたような気がしましたが、気分が良いのでスルーしました。
パメラが、小さな声で「グッジョブ!」って言ってくれましたし、男爵令嬢ズは、みんな、親指を立ててウインクしてくれました。
友達って、良いものです。
友達がいるから、学園でもやっていけそうな気がします。
4月14日
出入りのお得意さんのおかげで、隣国の言葉をマスターしてたなんて、ラッキーなことでした。