(4月20日付けの手紙)その2
いろんな授業があります。
お母さん
今日、保健の時間に、遺伝の話を聞きました。
保健室のベン・フォード先生の授業だったんですが、魔力保有量と遺伝の話をされたんです。
そもそも我が国ができたとき、多くの小国が群雄割拠する中で、魔力保有量の多い者を中心に戦って建国を勝ち取ったことから、戦いに貢献した者(魔力保有量の多い者)の身分が高くなって、守られていた者(魔力保有量の少ない者)が平民になったそうです。
それから、代を重ねて、平民の中にも魔力保有量が多い者が現れたり、逆に、身分の高い者の中に魔力保有量の少ない者が現れたりしたけれど、身分の高いグループは、ひたすら魔力保有量の多い者を取り込んで行ったそうです。
その結果、身分の高い者は魔力保有量が多く、身分の低い者は魔力保有量が少ないという現在の状況が出来上がったというのです。
これまでの歴史の中で、たまに現れる魔力保有量の多い平民は、身分の高い貴族たちに取り込まれ続けて来たのです。
私も、その一人になるんでしょうか。
私の意思を無視して貴族たちの良いように扱われるのは、ゴメンです。
私の生き方を決めるのは、私でありたいと思います。
昔は、私のような平民で魔力保有量の多い者は、有無を言わさず、貴族の愛人として召し上げられたそうです。
とんでもない話ですが、本人の意思は全く斟酌されなかったそうです。
魔力保有量の多い子供が生まれても、領主さまには知らせず、魔力制御を教えて自分たちの庇護の下に置くことで、トーリ村のご先祖さまたちは貴族たちの横暴に静かに抵抗したんでしょう。
カトンリーの役所のお兄さんが言ったような、学園へ行くとお金がかかるとか、そういう理由じゃなく、子供の人生を自分で選ばせてあげたいと思っての行動だったと思います。
それは、領主さまを騙す行為だったかもしれないけど、子供の幸せのために必要な行動だったんでしょう。
生まれたのが、今の時代で良かったです。
4月13日
PS ところで、この話を聞いていて思ったんです。
我が国では、身分が高いほど、髪の色が薄いでしょ?
学園へ来て、周りのお貴族さまたちが、みんな金色か金色交じりの薄茶色で、私の焦げ茶の髪が無茶苦茶目立ってるんです。
今日の授業を元に考えると、これは、身分の高い者同士が結婚を重ねることによる遺伝のせいだと思うんです。
魔力保有量と同じじゃないかと思います。
昔、平民の中に現れた魔力保有量の多い人の人生に思いをはせて、エヴァは人生を考えるようになります。