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(4月10日付けの手紙)その3

これは、4月10日に書いたことですが、長いので途中で切ります。

お母さん


 私、友達ができました。


 パメラのお仲間の男爵令嬢グループの皆さんです。


 マーサ・ロビンソン、テレサ・シェファード、スーザン・キンバリーの3人です。


 マーサは、恋愛小説が好きな栗色の髪に青い目の小柄な少女です。

 テレサは、背が高くやや明るい茶色の髪で緑の目をしています。代々騎士団に勤める武門の家の出だそうで、乗馬や剣技が得意なんだそうです。そのせいか、話し言葉が男っぽくて格好かっこ良いんです。4人の中では一番リーダーシップがあって、一同を仕切るのは、だいたいこの子です。

 スーザンは、中肉中背でミルクをいれた紅茶のような色の髪に紫色の目をしたキレイな少女で、みんなが何をしても、鷹揚に付いて行くお嬢さまって感じの少女です。

 これに、金色に近い茶色の髪で紺色の目のパメラが並ぶと、茶色からだんだん金色に変わっていくグラデーションみたいで、チームワークもばっちりです。


 私の髪は焦げ茶色で目も同じ色だから、4人の横に並ぶと完璧な色見本のようになります。

 

 総じて貴族の髪の色は金色に近い薄い色が多いので、私の髪の色は、結構目立ってます。

 学園ここでは、あんまり目立たちたくないのですが……。




 トーリ村はセクレド王国では中央よりやや北に位置していますが、マーサは王都の北隣、テレサは王都の西隣、そしてスーザンは王都の東隣に領地があるそうです。


 領地の名前は、聞いたんですが、覚えられませんでした。


 貴族と付き合うのは、大変です。本人の名前だって長くて覚えにくいのに、領地の名前、親戚の名前、果ては、寄り親や寄り子の名前に派閥まで覚えなければなりません。

 やっぱり、簡単な平民が一番です。


 あ、今は、領地の話でしたね。


 彼女たちのような男爵家が王都近郊に領地を持つのは、王都周辺に大きな領土を有する貴族を配置しないという第2代国王フレデリック陛下の意向によるものだそうです。




 スーザンの家は、領地自体は大したことないのですが、お祖父さまが商売を始め、それが成功したので大金持ちになったそうです。


 そう、彼女は、あの有名なキンバリー商会の会頭の孫娘なのです。

 彼女は、一つ上の学年に兄がいるそうで(ネイサンという方で、生徒会で会計をしているそうです)、こんなにお金のかかる学園に2人も入れるなんて、キンバリー商会がお金持ちだというのは、本当のようです。


 ただ、いくらお金があっても、あくまでも男爵家なので、公爵、侯爵、伯爵、子爵に劣るわけです。お家の人は、スーザンに子爵以上(できれば、侯爵か伯爵)に嫁いで欲しいそうです。


 パメラやマーサやテレサのお家の人も、娘を子爵以上に嫁がせて、上位貴族との伝手を作りたいようです。

 本人の気持ちを無視して道具のように扱っているようで、私としては微妙な気分です。



 ただ、彼女たちは、それが自分の役割だと割り切っているようです。


 割り切れなくても、割り切るしかないのでしょう。ちょうど、パメラと私がこの学園に来るのを強いられたのと同じです。




 ところで、彼女たちにとって、この学園に来たとことは、ラッキーだったようです。

 上手く行けば、優秀で好感の持てる男性と恋ができるかもしれないからです。恋ができたら、その先には、結婚だってできますから。

 周りの思惑に流されて、強引に結婚させられなくて済むのです。


 強いられた役割を憂えて、ウジウジしていても生産性がありません。

 だからでしょうか。彼女たちは、学園生活を楽しむことに積極的です。


 あわよくば、親を納得させるだけの男性を見つけて結ばれたい、と目論んでいるのです。




 パメラを入れて4人は『男爵令嬢ズ』というグループを作って、いろんな活動をしています。


 目下の活動は、入学式で在校生代表として挨拶されたケント・マクスウエル・フォン・シールド生徒会長(侯爵令息で御年おんとし17歳)の『身辺調査』と『追っかけ』です。

 

 入学式のケントさまは、ハンサムで、すごく格好かっこ良かったんです。

 で、私以外の1年の女子はみんな一目惚れしてしまったのです。


 驚いたことに、あのエリザベートさまもイチコロでした。

 いかに、ケントさまが素敵だったか分かるというものです。


 パメラたちの調査によれば、ケントさまは、シールド侯爵の嫡男で、お父上が外務大臣をされていることから、例の特別寮の住人になってるそうです。


 成績優秀、武芸も達者、リーダーシップもあるし、人心掌握術にも長けているそうで、そのカリスマ的存在感から、全校生徒の圧倒的な支持があり、2年生ながら生徒会長をしているそうです。

 入学式で挨拶されたときは、頼りがいのある優しそうな先輩って感じでした。



 容姿については言うまでもありません。

 ところどころに金色が混じった薄茶色の髪。切れ長の目に理知的な紺色の瞳。健康的でつややかな肌。細身なのにしっかり自己主張している筋肉。


 鑑賞用としては、パーフェクトです。


 ちなみに、お父上のシールド侯爵は、当代のベネディクト公爵が未成年のため、後見人を務めているとのことです。シールド家は昔からベネディクト家とつながりが深く、かの家の信頼が厚いそうです。


 以上 男爵令嬢ズの情報でした。


 

 男爵令嬢ズは、4人で行動することが多くて、いつも一緒です。

 それで、パメラの友人の私とも仲良くなったんですが、みんな貴族と言っても下っ端ですので、あんまり気を遣わなくても良いので助かります。


 スーザンだけは金銭感覚が違うので、話がすれ違うこともあるのですが、総じて、平民と変わらない価値観です。


 ただ、一応貴族ですので、どことなく平民と違うんですが、それは仕方がないことだと思います。

 だって、向こうは下っ端とはいえ貴族なんですから。

 いくら、上位貴族にないがしろにされるといっても、貴族であるという一点で平民とは決定的に違うんです。


 でも、そういう点を差し引いても、4人は親切で魅力的な女性です。

 クラスで用事を言いつけるときしか口をきかない人が多い中で、普通に接してくれる貴重な存在で、私のオアシスです。



 男爵令嬢ズの4人は、それぞれのお家の台所事情もマチマチなんですが、それでも他の上位貴族に対して団結して対抗しようとしています。


 頑張って!


と、エールを送っています。






エヴァは、パメラを介して男爵令嬢ズと友達になりました。

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