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(5月12日付けの手紙)

おかげさまで、100話を超えました。たくさんの方に読んでいただいて、とても幸せです。あと少しで完結ですが、これからもよろしくお願いします。m(__)m


久しぶりにお母さんから長い手紙が届きます。

お母さん


 久しぶりに長い手紙ありがとう。

 

「ガンバ!」とか、「ドンマイ!」とか、「何とかなるわよ」とか、「大丈夫」って手紙ばっかりだったから、お母さんが元気でいることが分かって、とても嬉しかったです。


 さて、お母さんが、お父さんがウイリアム殿下の生まれ変わりだって知ってたってことに、ビックリしました。


 だったら、ベネディクト家の使用人の食堂にあるクーパーの絵のウイリアム殿下がお父さんそっくりだって言ったとき、教えてくれても良かったのに。


 プンプン!


 

 でも、お母さんが、お父さんはお父さんなんだから、前世が王子さまでも現世には関係ないんだから、前世なんか気にしなくて良いって言ってくれたので、それもそうだと思いました。


 貴族でさえ、大変なんです。王子さまは、もっと大変だったでしょう。


 お父さんは、念願の(?)平民ライフを満喫したんですから、良かったと思います。


 

 でも、出会った年の大晦日の年越しのパーティーで、村中の人たちが輪になって踊った年越しの踊り(あれって、昔、トーリ村で流行ったそうですが、お父さんが布教したって聞いて納得しました。ウイリアム殿下の時代に流行ったイベントだったんですね)を踊って前世を思い出したなんて、ものすごくロマンチックですね。


 あのジャンプしてかかとを2回蹴るのが上手くできなくて、お父さんの足を踏んだのが切っ掛けだったなんて、マーサが聞いたら、悶え死ぬところです。


 その上、お父さんがスレイ翁のためにベネディクト家の森の開発計画を止めに行くとき、私を頼むって言ったことや、万一自分が命を落とすようなことがあったら、今世では不十分だったから、来世で必ず年寄りになるまで添い遂げようって約束して出かけたって下りを読んで、どこの恋愛小説だよ、って言いたくなりました。


 まさか、こんな身近なところに、小説に出て来るような恋をしている人がいたなんて。


 しかも、それが自分の両親だなんて信じられません。



 


 ところで、私が、幼い頃、スレイ翁に会ったことがあるって話は、初耳でした。


 お父さんが、森へ行くとき、1回だけ私を抱いて連れてったそうですが、全く覚えてないんです。


 で、そのとき、スレイ翁が私を気に入って、大きくなったら嫁に欲しいって言ったって話には、ぶっ飛びすぎて付いてけませんでした。


 おとぎ話どころのレベルじゃなく、荒唐無稽で信じられないんです。



 でも、そのとき、お父さんが条件を付けたって話には、笑ってしまいました。

 だって、いかにもお父さんらしくって、親馬鹿で心配性なんですもの。


 その条件の一つが、もっと私に相応しい外見になること(つまり若返るってこと)で、もう一つが、私が翁を好きになるってことだって聞いて、生まれ変わってでも、お母さんとの恋を成就させたお父さんらしいって思ったんです。        



 この前、翁は、私と同じぐらいの外観まで若返りました。きっと、お父さんとの約束を果たそうとしてるんだと思います。



 後は、私が翁を好きになるかどうかです。


 


 よく考えたら、翁は、私の愚痴を文句も言わずに笑いながら聞いてくれて、ツーノやイッカクを紹介してくれて、そして、私のために外観さえ変えてくれたんです。

 

 私、ものすごく大事にしてもらってるんです。


 翁は神さまなのに、キチンと約束を守ってくれています。


 しかも、翁の魔力と私の魔力の相性は抜群で、前にも書いたように、時々、二人の魔力を併せて遊んだりするんですが、不思議と疲れることもなく、むしろ、心地よい暖かさを感じてほっこりするんです。


 多分、私は、スレイ翁がおじいちゃんのままでも好きになってたと思います。



 翁は、ウイリアム殿下やダリと親しくしていたのに、どちらも若くして死んでしまったので、悲しかったと思うんです。

 親しい友人が死んだことも悲しかったでしょうし、そのせいで、心を許せる存在がいなくなってしまったことも悲しかったでしょう。


 あの小屋を私のものにするときサインした契約書に、


『この小屋は、ここへたどり着いた者に、スレイの孤独を癒し、ともに生きることを望む者に与える。』



って、書いてあったけど、翁はきっと孤独なんです。


 あの書類にサインしたときから、私は翁の側に留まって、翁とともに生きることを求められているんだと思っているんです。


 本当の目的を説明しないでサインさせるなんて、どこの悪徳商法だって思うけど、そんなんじゃなく、あの小屋の持ち主は、翁の孤独を知って、できる限り翁に寄り添えってことだと思うんです。


 だから、翁に恋をするとか、翁と結婚するとかしなくても翁の側にいるつもりだったんです。


 嫌々居続けるんじゃなく、翁のことが好きだから、できるだけ翁の側にいたいって思ってたんです。


 

 だって、ウイリアム殿下もお父さんも大好きだった方ですし、私だって大好きな方なんです。

 その大好きな方が独りぼっちで寂しそうにしているんです。そんなの放っておけません。


 私がいることで、少しでも楽しくなれるなら、こんな嬉しいことはありません。



 私は人間ですから寿命は翁みたいに長くはありません。


 でも、命ある限り、翁の側で翁の孤独を癒す存在でありたいと思ってたんです。



 でも、お嫁に欲しいと言われると、ハードルが高いというか、私で良いの?って訊きたくなるんです。



 だって、相手は神さまなんです。

 私みたいなちっぽけな人間がお嫁に行けるような相手じゃないんじゃないかって不安になるんです。



 それに、一番大事なことなんですが、翁のことは大好きなんだけど、これって恋愛感情なんでしょうか?


 恋をしたことがないので、よく分からないんです。

 

 

 


 マーサが見たら、ビックリするような手紙になりました。


 これから翁を恋愛対象として見るのだと思うと、どんな顔して会えば良いのか、見当が付きません。

 

 恋愛事に精通した男爵令嬢ズに、教えてもらおうと思います。



                     5月12日


                恋する(?) エヴァ





恋愛に縁のなかったエヴァに春が来るんでしょうか?

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