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(5月7日付けの手紙)その4

おかげさまで、総合評価230pt、ブックマークが62件と過去最高を日々更新しています。これも、読んでくださる皆さんのおかげです。ありがとうございます。

5月7日付けの手紙の最後です。

 でも、ケント会長まで女の子になっちゃったのは、どうしてでしょう?

 

 とんだ、とばっちりです。



 しかも、これから、このお二人はどうなるんでしょう?


 シールド侯爵もケント会長も女性化したことを大っぴらにするのは、とんでもないって顔してるんです。




「さて、シールド侯爵よ。これからどうするつもりじゃ?」


 翁が訊くと、苦虫を潰したような顔で侯爵とケント会長が答えます。


「ワシが女性化したことを公表することなんぞ、恥ずかしくてできんわい。

 じゃから、病死したことにして、領地の隅で静かに過ごすしかあるまい」

「私も、女子になったなんて、恥ずかしくて言えないんです。

 病死したことにして、別人として過ごしたいと思います」



 思うに、この人たちは、神さまの横暴で女性化したのに、つまりは、ある意味被害者でもあるのに、その事実を公表するのが恥ずかしいらしいんです。


 でも、そんなに恥ずかしいことでしょうか?


 そりゃあ、今までの一族の罪を咎められて、罪を償うために女性化したんですから、吹聴することじゃないと思います。

 

 ただ、災難だったことは確かなんですから、必要以上に恥ずかしがることもないと思うんです。



 でも、二人によれば、貴族にとって、男が女になったっていうのは、ものすごく恥ずかしいことらしいんです。


 聞けば、爵位の継承は、男子にしか認められていないそうですし、貴族の女性は社会的な活動も、せいぜい奉仕活動ぐらいしかできないそうで、子をなすことしか求められてないそうなんです。



 でも、それって、おかしいと思います。


 男がいて、女がいるから、世の中が回っているのに、女だからって差別するのは不合理です。

 特に、貴族社会で女性の権利が保障されていないのが、本当に腹立たしいです。



 女性化したことを秘密にしたいと思うのも分かるんですが、どんなに隠しても、早晩バレるに決まってます。



 だから、正直に公表すべきだと思ったんです。




 そこで、翁の提案で、善後策を相談することになりました。


 シールド侯爵やケント会長としては、一番良いのは、元に戻してもらうことですが、翁の決意が固いので、それは無理みたいなんです。





 スレイ翁(古木)の前に座り込んで相談するのも、今一だったので、森の小屋へ行くことになったんです。

 

 翁のところから1時間も歩くから、女性になったばかりのシールド侯爵やケント会長には大変だったみたいです。



 でも、小屋に着くと、一同、目を輝かせて、興味津々になったんです。



「スレイさま、もしかして、これはウイリアム殿下の建てたものですか?」


って、ジークが尋ねると、スレイ翁は「そうじゃ」って平然と答えたんです。


「ウイリアムが造り、ダリが受け継いだ。今は、エヴァのものじゃ」


「ウイリアム殿下のものだったのなら、今は私のものです!」


 やっぱ、そう言うと思ったわ。

 想像通りの展開でした。


「問題ない。ダリは、ウイリアムの生まれ変わりじゃ。

 じゃから、ダリのものは、娘であるエヴァのものになるんじゃ」




 えええええええっ?????



 今、何て言った?


 

 シールド侯爵もケント会長もジークも、口をポカンと開けて、呆けたような顔で私を見たんです。



 そんなビックリしないでよ。


 私だって驚いたんだから。



「そんなに驚くでない。ウイリアムに頼まれとったことじゃ。

 ニーナが生まれ変わるとき、自分も生まれ変わって、今度は一緒になりたいと。

 

 エヴァの母親のアナはニーナの生まれ変わりで、ダリはウイリアムの生まれ変わりなんじゃ。


 見れば、分かるじゃろう?

 エヴァは、ウイリアムにそっくりじゃ」


「髪の色も目の色も全然違うわ!」


と、シールド侯爵が吐き捨てました。


「おぬし、ベネディクト家で使用人の食堂にあるクーパーの絵を見なかったのか?

 焦げ茶の髪と目。顔つきもそっくりじゃろう。


 エヴァほど、この小屋の正当な持ち主にふさわしい者はおらん」


 そう言って、私にお茶を淹れるように言ったんです。


 BGMにシールド侯爵の唸り声が聞こえましたが、スルーしました。

 


 小屋のメインの部屋で、みんなで座って一息入れました。



 元々テーブルには、椅子が1脚しかなかったんですが、翁が4脚作り足しましたし、茶器も当然のように増やしたんです。



 そこで、さっきから気になってたことを翁に訊いたんです。


「スレイさま、どうして、ケント会長まで女性化したんですか?」って。



 スレイ翁によれば、ジークの行動をいちいちお母さんみたく心配するケント会長を見てたら、いっそのことジークの嫁になってもらって、一生面倒見てもらえば良いって思ったんですって。


 そして、それは、両親のいないジークのためでもあるのと同時に、シールド侯爵に対する罰にもなるんですって。


 というのは、ケント会長は、侯爵の自慢の息子で、しかも、唯一の子供だったんです。

 その子が、神の怒りに触れて、突然、女性になって、ジークに嫁ぐんです(これは、翁にとって決定事項のようでした)。


 そうなったら、ベネディクト家を支えるには良いんだけど、シールド家は断絶してしまうことになります。


 親戚から養子をもらうにしても、血統は変わってしまいますから、侯爵にとっては、断腸の思いでしょう。



 早々に表舞台から消えたがる侯爵に、翁は、ジークが成人するまでは領地にこもって領地経営やジークとケント会長の指導をするよう命じたんです。

 今現在、未成年の公爵であるジークの後見人は侯爵なんです。侯爵が病死を装って消えると、別の後見人を探さなきゃならないんです。


 貴族の世界って、本当に面倒なことが多いです。


 やっぱり、平民で良かったです。

 お父さんも、平民に生まれ変わって良かったって思ったことでしょう。



                   

                        5月7日


   お父さんとお母さんのことを知って驚いている エヴァ 


 

PS1 帰り道では、本当にキイチゴどころじゃありませんでした。でも、行きに去年の倍ぐらい収穫したので、パメラに渡す分だけじゃなく、調理長に渡す分まであったので、どちらも喜んでくれました。


PS2 お母さんは自分がニーナの生まれ変わりで、お父さんがウイリアム殿下の生まれ変わりだって知ってましたか?




やっと、伏線を回収できました。やれやれです。

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