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フラグの建て方

遅くなってしまい申し訳ありません

 昼休みになると、俺は隣の3組へ向かった。

 理由は明白だ。

 北中さんと裕樹との間でフラグを建てるためである。


 幸いなことに、既に赤坂さんにはビンビンにフラグが建っている。

 ちょっとチョロイン過ぎる気もするが、まあ夏休み前に二人のフラグを建てようと思っていたため、夏休みが二週間前に迫っている今、むしろありがたい。


 俺は、隣の三組に着くと、教室内で一段と目立つ一人の少女に声をかけた。


「よっ、久しぶり。北中さん」


 俺が声をかけると、彼女は特にこれと言った様子もなくこちらを一瞥して返事を返してくれた。


「あら、お久しぶりですね。"私に興味がない田中健二郎さん"今更、"私に興味がない田中健二郎さん"がなんの御用で?」


 どうやら、彼女は酷く怒っているらしい。


 というのも、怒っている原因は俺にあるのだが。


〜〜〜


 高校一年生になった時、前にも言った通り俺は主人公とヒロインを探していた。

 その時、最初に見つけたのが彼女、北中夢乃(きたなかゆめの)さんだったのである。


 見た目からはっきり伝わる清楚系美少女感に、非常にすらっとした体つき。胸は、赤坂さんには劣るものの、それでも素晴らしいものを持っている。まさに、彼女はヒロインにうってつけだったのだ。


 だからこそ、今まで女性と話したことがなかった俺は、そこでドジを踏んでしまった。


「俺の物語のヒロインキターーーー! あのっお名前は何と言うんですか!」


「き、北中夢乃ですけど……」


「夢乃! まさにヒロインにぴったりの可愛らしい名前じゃないですか! 素晴らしいです!」


「ど、どうも……」


 今まで女性との会話経験のなかった俺は、自分の思ったことをそのままベラベラと喋ってしまったのだ。


 だが、ここで終わっていればよかった。

 俺はその後に余計な一言を言ってしまった。


「と、というか、いきなりどうなさったんですか?私のことを俺のヒロインだなんて……もしかして、私ことが……」


「あ、別に俺の恋愛対象としてはどうでもいいです。全く興味がありません。ただ、俺の脇役高校生活においては、あなたはとても重要な位置で、今後見つかる主人公のt」


 とここで俺の記憶は途絶えており、余計なことをベラベラ喋ったばかりに、おそらく俺は彼女に殴られたのだろう。

 気絶させられたのか、気がついたら放課後の保健室だった。


〜〜〜


(まあ、あれ以来一言も話してないんだから怒って当然だよな…)


 そう思った俺は、彼女に謝罪の一つでも入れようと、改めて彼女に向き直った。


「あの時はすまなかった。確かに、初対面の相手に興味がないは失礼すぎた。本当に申し訳ない。ただ、あの時に言った君がヒロインだということ、それは事実なんだ」


 俺は彼女に伝える。


「小鳥遊裕樹って知ってるか? 二年になって俺のクラスに転向してきたやつなんだけど、なんでも物凄いイケメンでさ!」


「確かに、小鳥遊さんが美青年だという話題は、新学期になってうちのクラスでもしばらく話の話題に上がっていましたが、要するに貴方は何が言いたいんですの?」


「北中さんには、彼、小鳥遊裕樹のヒロインになって欲しいんだよ。」


 俺は、自分の思いの丈を彼女に伝える。

 ここで、変に誤魔化した言い方をしたところで無駄だ。前回のこともあり、おそらく彼女の俺への不信感はかなり大きなものになっているはずだからである。


「ヒ、ヒロインですか? よくわからないのですが……それに、裕樹さんがまず私のことを好きかなんて分かりませんし」


 案の定、彼女は嫌とは言わない。

 あくまで、小鳥遊裕樹が自分のことを知らないかもしれないと、知られていたらいいかのようなことをいっている。

 

 なら、次に俺がいうべきことは決まっている。


「大丈夫、裕樹が北中さんのことが好きという可能性はかなり高いから」


「それはどういうことですの?」


 案の定、彼女は食いついてきた。

 話を続ける。


「実は、俺が裕樹に鎌をかけたんだよ。赤坂さんって知ってる? うちのクラスにいるこれまた可愛い子なんだけど」


「知っていますけれど」


「その子と北中さんのこと、俺どっちも気になってるんだ。そう裕樹に言ったんd……やめて!殴らないで!もう少し待って!」


 この女、すぐに人を殴ろうとする。

 今の話の内容のどこに殴る要素があったのか。

 北中さんが拳を納めたところで、話を続ける。


「とりあえず、話を続けていいかな? それで、裕樹に言ったんだよ、そしたらあいつどうしたと思う?」


 俺は北中さんに話を投げかける。


「どうしたって……どうしたんですか?」


「怒ったんだよ。二人の話題を俺の前で出すなー! って」


「えっ、え?」


「だから、俺の前で北中さん達の話題を出すなって怒ったんだよ。これってどういう事か、流石に分かるよね?」


 改めて彼女にそう説明すると、彼女の頬がどんどん紅みを帯びていく。


「そ、それって小鳥遊君が私のことを好き……ってこと? え? 本当に? え?」


 今までにないぐらい彼女がテンパっている。

 ここで、俺はフラグを確かなものにするためにどんどん話を進める。


「そう、そこまでは理解できたみたいだな。なら、ここで俺の方から提案があるんだけど……今週の土日、どちらかあいつと北中さんでデートしてみたらどうだろう。勿論、手筈はこっちで整える。」


「デ、デート!? いきなりデートですか!? 」


 そう、デートだ。

 今週の土日でこの二人をデートさせてフラグを建てる。

 それが俺の目的だ。

 

「そうだ、デートだ。その様子だと北中さんも裕樹のこと少し気になってたんだろ?なら行こうぜ! デート」


 俺は再度彼女に提案する。


「そ、そんなことは……分かりました。行きます、デート。行かせてください。場所とか時間とかはどうするんですか?」


「それは決まり次第連絡する。」


「そう、なら決まったらすぐ連絡してくださいね? すぐですよ!」


「はいはい、分かりましたとも」


 と北中さんを裕樹に対してその気にさせることができてきた。

 デートをすればおそらく恋に落ちること間違いなしだろう。


 ただ、ヒロイン二人がこんなにチョロくていいのか?

 いくら何でもチョロすぎないか?


 何となくだが、このままだとこのラブコメ物語、明日で完結してしまいそうな気がする。

 折角見つけた主人公なのに、このままあっさり恋愛成就してしまっては、いくら何でも物語の盛り上がりが欠けすぎている。


(ただ、もう約束しちゃったしなぁ……もううまく行きすぎないことを願うしかないか)


 そんなことを考えながら教室に戻り、赤坂さんと昼飯を食べていた裕樹を呼び出し、悔しげに北中さんとデートして欲しい旨を伝えた。


「くっそお! 恋敵のお前にこんなことは言いたきゃねぇけどよぉ! なんか北中さんがお前とデートしてぇらしい。良ければ行ってやってくれねぇか? 俺は彼女が好きだが彼女のお願いは断れねぇ」


 あくまで恋敵として、今回は負けたと言わんばかりに伝えると、


「相手が女の子なら全然良いけど……いきなりどうしたんだい? あと、僕の前で二人のことを好きだのなんだのと言わない約束だろ?」


 と訳の分からない返答をされたが、何とか承諾は得ることができた。

 相手が女ならいい?

 俺が男とデートしろとか言うと思っていたのだろうか?

 俺にはそんな異常性癖はないのだが。

 後、恋敵なのだから好きをアピールするのは普通だろう。


 と、なんだかんだで予定も決まり、俺は、今週の週末がうまく行きすぎないことを願うだけとなった。


 そして当日、まさかあんなことになるなんてこの時の俺は想像もしていなかった。

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― 新着の感想 ―
[一言] 是非とも続きのほどお願いします! 大変面白かったです!
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