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ついに出会えた、主人公

 新学期、それは新たな出会いの季節。

 今まで仲良くしていたものと別れ、新たな友達を作る季節。

 そう。今日は、俺の通う学校、県立神田高等学校の始業式である。

 この学校は、入学式よりも先に始業式をするためまだ1年生は誰も来ていない。

 ひとまず、玄関前に貼り出されているクラス分けを確認しに行く。


(俺のクラスは……お、あった。4組か。)


 自分のクラスが4組ということを確認すると、俺は急いで教室へ向かう。


 新学期、それは俺のテンションが最高潮に達する日だ。

 新しい学年、新しいクラスメイト、新しい友人、そんなものはどうでもいい。

 俺が新学期を楽しみにしている理由、それは……


(今年こそ、主人公のような人間はいるかなぁ〜♪)


 そう、主人公に出会える可能性である。


 中学三年生と高校一年生、過去二年はそんな存在に出会うことなんて全く叶わなかった。


 特に、高校一年生なんて様々な学校からいろんな生徒が来るのだから、一人ぐらい主人公が見つかると思っていた。


 だが、そんな奴には誰一人として出会えなかった。

 学年中を探し回ったがそんな奴は一人としていなかった。

 せいぜいヒロイン止まりの男女ばかりだった。


 なら、何故高校二年生でまた期待してるのかって?

 もう学年中探したんじゃないかって?


 そう思った人もいると思う。

 だが、まだ可能性はゼロじゃないのだ。


 なんと、噂によるとこの学校に一人転校生が来たようなのだ。


 たかが一人かよ……そうおもった人はよく考えてみてほしい


 ここは、県立高校だぞ?

 定員満員で新入生が入って来るんだぞ?

 そんな高校に転入生……すごい奴に決まっているだろう!


 そう、すごいやつに決まっている。

 ならば、後はそのすごいやつが自分のクラスに来るのを願うまでだ。


 俺には男か女かなんて関係ない。

 主人公であれば誰でもいいのだ。

 そいつに引き立てる価値があればそれでいいのだ。


〜〜〜


(これはキマシタワーーーーー!)


 クラスのSHRが始まると、俺は心の中でそう叫んだ。

 俺の前の席がポッカリと空いていたのだ。

 新年度の始業式に学校に来ない奴なんて普通はいない……風邪とかインフルエンザでもない限り。


 だが、そんな可能性は微塵もない。


 なぜなら、


 クラスメイトがざわざわしている。

 廊下側の窓の向こうには人影が一人。

 そして、俺の前の席が空いている。


 そう、何やら異常なのだ、


 そして、以上のことから裏づけられる可能性は一つしかないだろう。


(俺の前の席が主人公じゃあ〜!)


 そう、噂の転校生が俺の前の席、という事実である。


 長年待ちわびた主人公の登場……しかもそいつが俺の前の席……テンションが上がらずにはいられない。


 更に、俺のテンションが上がっている理由はそれだけではない。


(そしてそれだけではなく、まさかあの人まで同じクラスとは……)


 あの人、それは赤坂汐梨(あかさかしおり)さんである。

 何故、彼女と同じクラスでテンションが上がっているのか。

 それは至極当然の理由である。


 俺は、この神田高校に入り、主人公を探すと同時に、主人公が男の場合と女の場合でのヒロインと呼ばれる者達も探していた。


 そして、探した結果、男一人、女二人とヒロイン役を見つけていたのだ。


 そのうちの一人が彼女、赤坂汐梨さんである。


 もし、転校生が男なら俺が転校生の魅力を引き立て、赤坂さんに男への恋心を芽生えさせ、もう一人のヒロイン役も惚れさせて、二人でバチバチと恋愛バトルをしてもらって、最後にどちらかと付き合わせる。


 仮に、転校生が女だとしたら……俺が見つけたヒロイン役の男を引き立てて転校生と赤坂さんともう一人の子でそいつを取り合わせる。


 どちらにせよ、俺が脇役として登場するラブコメ作品の完成だ。


 そう。今、彼女と同じクラスになるのは、俺が脇役を演じるための盤面が揃った。

 そう言っても過言ではないのだ。


 そんな考え事をしていると、クラスの担任である岸先生が俺が待ちきれずにいる内容について話し始めた。


「では、今日の流れと明日の入学式について一通り話し終えたところで……今日、このクラスに転校生が一人きている。」


 先生がそう告げるとクラス中が湧き立つ。


「やっぱり俺らのクラスだったか!」


「先生!噂では超イケメンらしいんですけど、実際どうなんですか!?」


「は?俺は、超絶美少女って聞いてるぞ?」


「お前ら落ち着け!紹介ができんだろうが!」


 先生がクラスメイト達をたしなめる。


 クラスメイト達が馬鹿騒ぎしている中、俺は、俺だけは緊張で胸がドキドキしており、騒ぎ立つことなんてできなかった。


 ただ、緊張でズボンの布地に手汗が滲み、額を汗がつたり、呼吸が浅くなり、持久走を走り終えた後のような目眩までする。


 転校生の紹介……俺の人生を占うその瞬間が刻々と近づく中、とうとう先生が口を開いた。


「よし、大人しくなったな。それでは転校生を紹介する。入ってこい、小鳥遊!」


 小鳥遊、そう呼ばれた人物が教室の戸を開け、部屋に入ってきた。


 俺は、今にも失神しそうな状態で、足先からマジマジとその人物を見上げていく。


 まず、ズボンを履いていることから男と言うことがわかった。

 次に、男と言うには少し華奢な体つきに、歩くたびに揺れるサラサラとした後ろ髪。

目線を上げていくと、目に映ったその横顔は非常に穏やかで、顔つきは中性的な美青年だった。


 そして、


「わt……僕の名前は小鳥遊裕樹です。今日からこの学校に転校してきました。よろしくお願いします。」


 彼の声は、非常に聞きやすく、声変わりしていないのか?と言った具合のアルト気味な美声だった。


 俺の中で何かが疼いていく。

 今にも爆発しそうなこの思い。

 まるで、奇跡にでも出会えたかのようなこの感動。


 俺は、これを我慢することができなかった。


「主人公キタァァァァァァ!」


 俺は、彼の自己紹介が終わった瞬間に席を立ち上がり、物凄く大きな声でそう叫んだ。


「おい、田中! 静かにしろ! なんだいきなり大声を出して。」


「先生! これが黙らずにはいられますか! 主人公ですよ! ヒロインですよ! 俺の脇役高校生活がいよいよ始まるんですよ!」


 先生やクラスメイト、赤坂さんや小鳥遊君まで呆れた目で俺をみてくる。


「はぁ?まあ、よく分からんがとりあえず座れ。こんなことで反省文、書きたくないだろ?」


 俺のテンションが人生最高潮に達している最中、俺をどん底へ叩き落とす台詞を先生が言ってきた。


 このクソ教師、教師の特権を使ってきやがった、反省文なんて書かされてたまるか。


「はい、すみません」


 俺は、テンションを下げたフリをしながら、そう言って大人しく席に着いた。


「よろしい。では、小鳥遊。お前の席はあそこだ。分からないことがあったらさっき叫んでいた田中にでも聞くといい。とりあえず席に着いてくれ」


「分かりました」


 先生にそう言われると小鳥遊君は席に近づいてくる。


(やっぱこいつマジかっけぇ……主人公感と言うか……俺らとはオーラがちげぇわ)


 そのまま、そいつは自分の座席につく。


(こいつは間違いなく俺にとっての、いやこの高校においての主人公だ。なら、今から何をすべきだ? 決まっている。俺はこいつの友人になる! そんでもって脇役としてこいつを際立たせる!)


 そうと決めた俺は小鳥遊君に声をかけた。


「よう、さっきは叫んじまってすまなかったな。俺は田中健二郎! これからヨロシクな!」


「……」


 いきなり無視された。

 さっき叫んだのがいけなかったのだろうか。

 もう一度、同じように話しかけてみる。


「よう、さっきは叫んじまってすまなかったな。俺は田n」


「……あまり僕には関わらない方がいいよ。」


 俺が同じ台詞を繰り返していた途中で、彼はそう告げた。


「それはどうしてだ?俺と仲良くなったところで何か問題があるのか?」


 再び彼にそう問い詰めると、彼から返答が返ってきた。


「僕に関わると君の命が危ない……君が男だからなおさらね……」


 彼の口からはごく普通の高校生からは決して出ないであろう内容が口に出された。


 なんと人と関わる、それだけで命が危険になると言うのだ。


 だが、やっとの思いで主人公を見つけた俺には、そんな脅し(?)なんて関係ない。


(俺にはわかる……こいつは……こいつはどこまでも主人公だ!)


 俺、主人公の小鳥遊を引き立てる脇役になりたい。そんでもって、可愛い女の子と付き合わせて、俺の仮説を証明したい……彼の台詞を聞いた俺の脳内はこのことで埋め尽くされていた。


 まだ2話ですが、投稿ペースが2日に1話ほどになると思います。


 学生として勉強しなくてはいけないので……


 次話は明後日には投稿します!

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