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10分で胸キュン恋愛短編集

4月1日

作者: 二コ・タケナカ

4月1日投稿のショートショート作品です。

・ある男子高生の悩み


「う゛~っ」

オレはベットで仰向けに寝ころんで唸っていた。

手には携帯を持ち、打ち込んである文字とずっとにらめっこをしている。

画面にはこう書いた。


『ずっと前から好きだった。付き合ってほしい』


自分でもありきたりなセリフだと思う。しかし、考えに考え抜いてやはり直球なのが一番だろうと、この20文字に行きついた。

送ろうと思っている相手は高校で同じクラスの女子だ。


その子のことは高校の入学式の時から気になっていた。

いわゆる一目惚れだった。

だが、女の子とまともに話した事のないオレの方から声をかけられるはずもなく、胸に淡い思いを秘めたまま時は過ぎた。


幸運が訪れたのは3学期の席替えの時。

その子と隣の席になることが出来た。

ここで一気に距離を縮めるチャンスだったにもかかわらず、オレにできたのは朝、挨拶を交わすぐらい。

通路を挟んでわずか数十センチ隣にいる彼女の間には越えられない大きな溝があった。


このままではいけない!

誰かが言っていた「高校3年間なんて、あっという間だぞ」その言葉をオレは実感していた。もう高校生活は3分の1が過ぎてしまったのだ。彼女と同じ学校でいられる期間なんてあと2年しかない。

それに、春休みが空けて2年生になっても同じクラスになれるとは限らない。


オレはこの休みの内に告白しようと決心した。

が・・・・・・決心してから、もう春休みも半分が過ぎてしまった。


毎日の様に同じ文章を打っては、消すを繰り返す日々。

今もこの人差し指を画面に触れさえすれば、彼女に思いを伝える事が出来るのに・・・・・・。

携帯を持つ手には力が入り、緊張で汗ばんでツルツルする。


つるんっ!


汗で滑った携帯がオレの顔面へと落ちてきた。

「いてっ!」


転がった携帯を手に戻したオレは固まった。

画面には送信されてしまった20文字が・・・・・・

「はっ?」


慌ててメッセージを削除しようと指を伸ばすと、画面に映る既読の文字が目に入った。

「マジか・・・・・・」

オレは携帯を投げ出し、代わりに枕を抱えベットの上でのたうち回った。

(うぉーーーっ!やっちまったぁ!!)

いや、これでいい。突発的なアクシデントとはいえ、最初から送るつもりだったのだから。こんな事でもないと送れないままだったかもしれない。


ブーッ、ブーッ

通知が来たことを携帯が震えて知らしている。

投げ出した携帯を拾い直し、オレは期待と不安を胸に画面を覗き込んだ。


『付き合うなんてありえない。エイプリルフールのネタだよね?』


オレは凍り付いた。

画面の日付けは4月1日を示していた。



・ある女子高生の憂鬱


私には気になっている人がいる。

同じ高校に通う、同じクラスの男子。その人とは入学した当日からふとした瞬間によく目が合っていた。

目が合うものだからこちらも意識してしまう。

だけど、特に共通点は無く、喋った事もほとんどないまま年が明けた。


3学期。席替えで私はその人の隣の席になった。

今まで通り、特に喋る事もしなかったけど、1つ変化が起きた。

「おはよう」

彼は登校してくると私に挨拶してくれるようになった。


何気ない一言だった。

挨拶した後はすぐ席につき、前をむいて目も合わせないし、最初は私に言っているのか気付かないような挨拶だった。

けど、ちゃんと私に言ってくれている。

目を合わせないところが、シャイでかわいい。


「ねえ、まだ連絡先知らないよね。交換してよ」

私の方から携帯の連絡先は聞いた。

ネットで如何に自然と連絡先を交換できるか調べ尽したので上手くいった。


『二年になったら、理数系と文系どっち選択するの?』

『オレは文系かな』

『そうなんだ』


彼とは学校がらみの話しか交わしていない。

(私も文系にしようかな・・・・・・)

彼と同じクラスになれるように。


私の方から話しを振らないと通知はこない。

こちらに気のある素振りを見せていたと思ったけど、反応が薄いのは脈は無かったということなのか?

特に進展しないまま、彼の隣でいられた3学期は終わってしまった。


「はぁ・・・・・・」

春休みが始まり、彼との接点は何も無くなってしまった。

ベットに寝転がりながら、通知の来ない携帯を見つめる。


ブーッ、ブーッ

不意に鳴ったバイブ音にビックリして落とした携帯は、私の顔面を叩いた。

「いたっ」


通知を確認した私は、胸が高鳴った!

「うそ・・・・・・」

画面には唐突な告白のメッセージが。


『ずっと前から好きだった。付き合ってほしい』


待っていた言葉だったけど、いきなり過ぎる。それにいつも私の方から連絡しているのにおかしい。

「そういうことか・・・・・・」

今日は4月1日。エイプリルフールだ。

私はからかわれたのだろう。


もしくは私の反応を見ているのか?

断わられても嘘だといってごまかせるし、もしOKされたらそのまま都合よく付き合うことも出来る。今日という日を狙ってよく使われる手だ。

私はすぐさま返事を送った。


『付き合うなんてありえない。エイプリルフールのネタだよね?』


打ち終わると携帯を投げ捨て、枕に顔をうずめた。

(・・・・・・顔を合わせて言ってみなさいよ!このヘタレ)



新学期。

彼とは同じクラスになった。しかも、また隣の席。


「あのさ、この前のメッセージなんだけど・・・・・・」

珍しく彼の方から話しかけてきた。

私は彼の言葉を遮った。

「あれ、ウソだから」

「え?それって、どういう・・・・・・」

困惑する彼に私はいたずらっぽく微笑んだ。


4月1日私の付いた嘘。

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