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理不尽な代償

作者: 頭巾の子


指先に咲く白い花

柔らかなそれは硝子に変わりパリンと音を立てて崩れ落ちる。


花が咲いた指先は跡形もなく。


今日は右の小指だったかあと呟くそれは穴ぼこで、穴の下には落ちた硝子がたまっている。


硝子は大小様々で


硝子はそれの代償である


「昨日は左耳の上、一昨日は…腰の辺りだったか。」


それは既に落ちたはずの代償の右の親指と人差し指を折って数える


その前は右のくるぶしで


その前は左の手首で


その前は右のももが大きく落ちた


ついさっき落ちた代償の指を折ってあれは大きくて綺麗だったなあ、と他人事に言うそれはもう少しもう少しと嬉しそうに微笑む。



幾月たってあと一つと声なく言うそれは最後に心の臓に花を咲かす


雄大なその代償はいままで咲いたどの白い花より美しく、光輝く硝子となりいままで落ちたどの代償より醜悪な真っ赤な濁りを帯びて崩れ落ちる。


#######



昔々あるところに、白い花の魔法使いが産まれました。


小さな白の花の魔法使いは周りの立派な魔法使いにそれはそれは愛され育ちました。




どんな思いも汲み取られ。


どんな願いも叶えられ。


小さな白い花の魔法使いは立派な魔法使いへと成長します。


白い花の魔法使いは立派な魔法使いになるときにとある立派な赤い花の魔法使いとある一つの約束事をしました。


「いーい?これだけは絶対に守るのよ。」


「絶対?」


「絶対。」


「「赤い糸を切ってはいけない。」」


たったそれだけ。


それだけは白い花の魔法使いがどんなに切りたいと思ってもどんなに切りたいと願っても汲み取られることなく叶うことない事だと周りの立派な魔法使いも言いました。


白い花の魔法使いは何の事かもわからずに約束を交わします。


きっと、望めば最後は切ってしまえるだろうと思ったから。


白い花の魔法使いは約束交わしてすぐに赤い糸が何の事だか知りました。


赤い花の魔法使いと青い花の魔法使いを結ぶ赤い糸。


二人が一緒ならどこへだって行けます。


緑の花の魔法使いと黄色の花の魔法使いを結ぶ赤い糸。


二人が一緒ならどこへいったって戻れます。


黒い花の魔法使いと紫の花の魔法使いを結ぶ赤い糸。


二人が一緒なら何だって出来ます。


銀の花の魔法使いと金の花の魔法使いを結ぶ赤い糸。


二人が一緒なら何をやったってへっちゃらです。


では、自分は誰と繋がっているのだろう。


白い花の魔法使いは自分の赤い糸を手繰りその先へその先へと進みます。


進めど進めど終わりはありません。


白い花の魔法使いは疲れて座り込んでしまいました。


すると、赤い花の魔法使いがやってきて帰りましょうと声をかけてきます。


白い花の魔法使いは言いました。


「どこへ帰ればいいの?」


赤い花の魔法使いは赤い糸の先の青い花の魔法使いの所へ帰ればいい。


けれど、白い花の魔法使いの赤い糸の先はまだ見つかってないですからどこにも行けやしないし戻れもしない、何も出来はしないし何をやってもダメダメです。


白い花の魔法使いは悲しくなりました。


寂しくなりました。


悔しくなりました。


恥ずかしくなりました。


妬ましくなりました。


許せなくなりました。



切ってしまいたいと望みました。



「だめよ‼️」


そう叫ぶ赤い花の魔法使いの声は届かず。


白い花の魔法使いは赤い花の魔法使いと青い花の魔法使いの間の赤い糸を切ってしまいました。


赤い花の魔法使いはどこへも行けなくなりました。


何も出来なくなりました。


白い花の魔法使いは少し焦りましたが少しすっきりしていました。


しかし、赤い花の魔法使いに元に戻って欲しいと思い青い花の魔法使いにここに来てほしいと願います。


思いは汲み取られ赤の花の魔法使いは元に戻り。


願いは叶えられ青い花の魔法使いは何処から途もなく表れます。



白い花の魔法使いは驚きます。


思いが汲み取られ願いが叶えられた事にではありません。


赤い花の魔法使いに元に戻ってほしいと思ったのに、事実思いは汲み取られたはずなのに。


赤い花の魔法使いの赤い糸は切れたままでした。



青い花の魔法使いは悲しそうに俯きます。


赤い花の魔法使いは寂しそうに泣き出します。


ですが、二人は白い花の魔法使いに悔しくなることもなく恥ずかしくなることもなく妬ましくなることもなく。


白い花の魔法使いを許しました。


「赤い糸は切れてしまっけれど手を繋ぐわ。」


「手が離れてしまったら?」


「それでも隣を歩こう。」


「隣を歩けなくなったら?」


「「それでも心は一緒に。」」


白い花の魔法使いはそれなら赤い糸はもう必要ないねと立派な魔法使い達の赤い糸を切っては飲み込みました。


赤い花の魔法使いは今度は何も言いません。


だって、赤い糸を切ってしまった時点で赤い花の魔法使いに出来ることはもう無いのですから。


青い花の魔法使いにも、緑の魔法使いにも、黄色や黒、紫や銀に金の魔法使いにも、どうすることは出来ません。


白い花の魔法使いは周りの立派な魔法使いにそれはそれは愛されて育ちました。


その世界と赤い糸で繋がる白い花の魔法使いの思いは汲み取られ、願いは叶い。


しかし、白い花の魔法使いはその望んだ訳ではない対価の代償にその小さな魔法使いの世界から出ることは許されませんでした。


その世界との赤い糸を切ることも。


それを不憫に思った立派な魔法使い達は白い花の魔法使いが少しの間でも悲しく無いように寂しく無いようにその小さな魔法使いの世界にお願いをしました。


白い花の魔法使いが赤い糸を切りたいと望まぬ限り私達が白い花の魔法使いを愛するのを許して頂戴と。



白い花の魔法使いは望んでしまいました。


切ってしまいました。


もう、立派な魔法使い達に愛される事はありません。


けれど、白い花の魔法使いは願います。


もう一度愛されたいと。


けれど、白い花の魔法使いは思います。


二度と赤い糸と切りたいなどと望まぬと。


そして、白い花の魔法使いは望みます。


その小さな魔法使い世界と一緒に立派な魔法使い達と共に暮らしたいと。


望んだ対価の代償は大きな物となり白い花の魔法使いを囲い込みます。


長い年月をかけて少しづつ代償を払いつづけます。


落ちた代償は赤い糸となり共に暮らす未来への道しるべとなり白い花の魔法使いは小さな魔法使い世界と一緒にその先へ、先へと進みましたとさ。

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