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十月一日 夕焼け
雲を見た。と言っても、ただの雲じゃない。夕暮れ時の、橙に染まった雲だ。これがなかなか綺麗だった。日はとうに山の向こうに沈んでしまっている。だのに、山際は紅葉のように明るかった。見上げれば深い藍色で、一等星がぽつぽつと見られる。そんな空の中で、輪郭のあやふやな橙雲が流れる様は、水彩画よりも絵らしかった。
久方ぶりに美しいと感じた。美しいものを美しいと感じることが、どうも少なくなったと思う。これでも私も作家の端くれ、感受性というのはとても重要だ。今日の夕焼けに感じた想いを、忘れないでいたいものだと思う。