第3話 新しい生活
(チュン、チュン)
あの後、万葉は疲れで死んだように寝落ちし、その姿を見ていた優もつられて眠ってしまった。
(ガバッ!!)
朝であることに気付いた優は飛び起きた。
「うぉ!!寝ていたぁ!!」
近くに置いてあったスマートフォンを手に取り、日付を確認する優。
「に、日曜日だった、、。よかった、、、」
「おはようございます、優さん」
安心した優に、聞き慣れない声がする。その声の主は、起きた優にコップに注いだ水を持ってきた。
「あ、万葉、、。早いね」
万葉はボロボロの服のまま、朝を迎えていた。それを見た優はバタバタとタンスを開ける。
「万葉、これ!男用だけど、、、」
短パンとTシャツを万葉に渡した優。万葉は、至れり尽くせりの優の対応にまたも驚きを見せる。
「何から何まで、、、。本当にありがとうございます」
「人がきれいな服を着る。当然のことだよ!そうだ!!」
優は思い出したかのように、今日の予定を万葉に伝えた。
「今日は買い物に出かけよう。食品の買い出しにもいかないといけないしね」
「承知しました。どこへ行くのですか??」
万葉に着替えるよう言い、朝ご飯を食べた二人は電車を使って大衆スーパー『LIVE』へ向かう。
「わたし、こういった乗り物は初めてで」
バスに乗り込む際に優は、その方法を万葉に教えながら。やはり奴隷として生きてきた万葉との違いを感じながら、優はスーパーへ向かうのだった。その間にも様々な奴隷を抱える男を目視できたが、もういちいちそのような汚物は目に入らない。優は万葉の知らないことを教えることに楽しさを感じていた。
「周りに合わせる必要はないよ。俺の行動パターンになれてくれればいいから。」
「は、、はい!」
目的地に着くと、その施設の大きさに万葉は圧倒された。しかしこのスーパーはチェーン展開されているなかでもあまり大きいくはない。万葉の無知さがでているようだ。
「ここには、なにが売っているのですか?」
「ここでは何でも買えるんだよ。地下に食料品、一階が飲料や惣菜、二階が日用品になっててね」
優は詳しくスーパー内を案内すると、効率の良い回り方を説明し買い物を始めた。
買い物を終え、重たい荷物を抱えて2人は電車に乗り、家路についた。
「この量、いつもお一人でされていたのですか?」
「そんなことないよ。もっと量少なかったからさ、いつも。張り切って買いすぎたよ」
優は笑いながら万葉に言う。
「わ、私のいるせいでしょうか…」
「んー、まあそうかな」
申し訳なさそうにする万葉に優は、笑いかける。
「でも、『せい』って言い方はよくないな。万葉もいるから、この量なんだ。家族の分を用意するのは当たり前のことだろ?」
「…」
目頭が熱くなる万葉。文化の違いがあれど、一人暮らしの優はたくさんの買い物をすることを楽しみにしていた。
それから2人の会話はないまま帰宅したのだった。