2(何を欲しがるって?)
*
帰宅するやリョータが叫ぶ。「ザリガニ、釣れた!」
ふーん。「エサは?」
「チクワ」
「もったいない」あたしは練り物大好きだ。「サバを食べさせると体が青くなるよ」
「マジで!?」
「ウソぴょーん」
「どっち!!」
うっさいな。「自分で試せよ。簡単だろ、あたしが嘘つきか、あんたが騙されたか」
リョータは少し考え、「おう」何かの理解に達したようで、「おう」
よしよし。「ザリガニって食べられるよ」
甥っ子の目玉が落っこちそうな顔ったら。
「共食いもしちゃうよ」
顔を上げたら、彼のお母さんはサバでも食べたか、顔が真っ青。
*
「誠意って、どう計ればいいんだろうな」
遅くに帰宅したタツ兄ぃが弱気だ。あたしは親指と人差し指でマルを作って、「金額?」
「お前は! なんでそう世知辛いんだ!!」
「どうにもならない事を補填するのに、お金以外があったら教えて?」
「……地球でしか採れない鉱物とか喜ぶだろうか」
「星間飛行してくるような知性体が? 何を欲しがるって?」
「ああ、どうしたらいいんだろう」タツ兄ぃは両手で頭を抱えた。あたしは昔からそれを密かにカタツムリのポーズと呼んでいる。
ちょっと不憫に思ったので、兄を力付けようと、「何はともあれ」あたしは言った。「今のところ、ひとつは良いことあるじゃん?」
のっそりとカタツムリは顔を上げた。「……何がだ?」
「人類は彼らの食糧ではない」
「怖いこと言うなっ!?」
「逆に考えればいいじゃん、例えば人類が星間飛行したとする」
「ふむふむ」
「で、何か知的生命体っぽいのに遭遇する」
「うむうむ」
「さぁ頭からバリバリ喰うぞ!」
「怖いこと言うなっ!!」
「だからさー、この来訪に目的があると考えること自体が間違いなのかもだ」
「……弱ったぞ」
「どこがさ?」
「目的がない目的なんて、おもてなし以前の問題だぞ!」
「裏がないから表なし」
「子供かっ」
「目的ないから裏も表もないんだよぅ」
「ばぁっ」タツ兄ぃは目を剝き出して、「トンチ合戦をしてるんじゃぁない!」
「ばぁっ」あたしも唾を飛ばし、「自分の基準で計らない!」