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第二話 バックシートドライバー

今時珍しいヒッチハイカーの正体は……

 田舎での法事の帰り、田岡が夕暮れの迫る山道を運転していると、今時いまどき珍しいことにヒッチハイカーに出会った。どうしようか迷ったが、特に急ぐ用事もないし、交通量も少ないので乗せることにした。

 近づいてみると三十代ぐらいのやせた男で、顔が青白く、ちょっと薄気味うすきみが悪い。まったことを後悔したが、ふもとまでということなので、それまでの辛抱しんぼうとあきらめるしかない。

 走り出してから、ルームミラーでチラッと見ると、その男と目が合ってしまった。

(やっぱり、気味が悪いな)

 田岡がそう考えた途端とたん、男が話しかけてきた。

「今、やっぱり、気味が悪いな、と思ったね」

(なんだ、こいつは何を言ってるんだ)

「なんだ、こいつは何を言ってるんだ、と思ったね」

(うわっ、おれの思っていることがわかるのか)

「うわっ、おれの思っていることがわかるのか、と思ったね。あ、でも、ちゃんと前を見て運転しろよ。ハンドルがふらついてるぞ」

(なんだなんだ、こいつは)

「なんだなんだ、こいつは、と思ったねって言ってる場合じゃないな。前を見て、カーブだカーブ!」

(こいつはあれだ、あの、ええと、人間の考えを読み取るという、サトシの化け物だ)

「こいつはあれだ、あの、ええと、人間の考えを読み取るという、サトシの化け物だ、と思ったろ。間違ってるぞ。サトシじゃなくてサトルだって、あ、危ない危ない。転落するぞ。運転に集中してくれ!」

(こんな状態で、集中できるか。あ、逆に事故った方がいいかもしれないぞ)

「こんな状態で、集中できるか。あ、逆に事故った方がいいかもしれないぞって、なんてことを考えるんだ。落ち着け、安全運転するんだ」

(だが、そうでもしないことには、この化け物から逃げられないかもしれない)

「だが、そうでもしないことには、この化け物から逃げられないかもしれないって、そんなことないから。麓まで行くだけだから。お願いだから、運転に集中してくれよ」

(言い伝えでは、確か最後には食われてしまうんだ。ああ、誰か助けてくれ)

「言い伝えでは、確か最後には食われてしまうんだ。ああ、誰か助けてくれって、そんなの迷信だから。食べたりしないから。あっ、あっ、そこ右、あああ、次は左、ひいっ。ああ、もういい、もういい、路肩ろかたに停めてくれ、降りるから、もう停めて停めて、お願いだから、停めてーっ!」

(サトルの化け物は今にも泣きそうな顔で車から降りたぞ)

「サトルの化け物は今にも泣きそうな顔で車から降りたぞって思ったろう。チクショーッ!」

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