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第十話 シャッフル家族

 先週異動してきたばかりの新しいパパが、あたしとママに話があるという。明日は友達のミコと遊びに行く約束があるから早く解放して欲しいけど、今度のパパはちょっと理屈っぽいから長くなるかもしれない。

 リビングに行くと先にママが来ていて、パパと向かい合わせに座っていた。あたしは自然にママの横に座った。

 すぐに話が始まるのかと思っていたのに、パパはどういうふうに話すのか悩んでいるみたいなので、こちらから聞いてみた。

「で、話って何なの?」

「うーん、そうだな。ぼくが呼んだのだから、ぼくから話を切り出すべきだな」

 あー、もう面倒。前のパパはもっと気さくだったのに。

 ママも同じらしく、ちょっと不機嫌そうにしゃべり出した。

「もう遅いし、そのお話は明日にできないかしら。明日は日曜だから、ゆっくり時間はあるじゃない」

「いや、明日は会社の接待でゴルフに行く予定がある。できれば、今日中に話しておきたいんだ。そんなに時間は取らせないよ」

「じゃあ、どうぞ。聞いているわよ」

「うん」

 また、悩んでいる。どうして、先に話をまとめておかないのだろう。前のパパより役職は上らしいけど、会社でもこんな感じなのかしら。

「ええと、そうだな。うん。ぼくがこの家に来て一週間になるわけだが、その、いろいろ気になることがあってね。それをきみたちに、まあ、直して欲しいんだよ」

 ママの眉間にギュッとシワが寄った。

「ちょっと待ってちょうだい。それはどういう意味? わたしの生活に干渉するつもりなの? そんなの家族管理法違反もいいところじゃない。第一条、家族は互いの生活を尊重すべし、でしょ」

 そういうことなら、あたしも黙っていられない。

「そうよそうよ。あたしだっていろいろ我慢してるのよ。前のパパより足が臭いし、髪の毛も薄いし、でも、そういうことは言わずに、決められた期間を家族として過ごすのが決まりじゃないの」

 あたしの言ったことが気にさわったらしく、みるみるパパの顔が真っ赤になった。

「だから、こういう制度は嫌いなんだよ。なんで、人生における不公平を是正ぜせいするという理由で、家族をシャッフルしなきゃならんのだ。昔だったら」

「あらまあ、あなたって、主義者なの?」

 ママにそう言われて、真っ赤だったパパの顔が真っ青になった。主義者というのはマイホーム主義者のことで、家族管理局に通報されると、隔離かくり処分になってしまうからだ。

「あ、いや、もちろん、そうじゃないよ」

「じゃあ、干渉するのはやめて。わたしは来週異動だから、どうしても干渉したいっていうのなら、次の人にしてちょうだい。わたしはまっぴらよ。もう寝るわ」

 ママがプリプリして行ってしまうと、パパはションボリしてしまった。会社ではエライ人かもしれないけど、家の中で同じように威張いばるのは無理だとわかったみたい。

 ちょっとかわいそうだけど、あたしだって来月には異動だから、パパに合わせるつもりはないわ。まあ、次にはもっと従順じゅうじゅんな子が来るかもよ。

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