Page.22「二人の“聖女”」
暗い森の中を歩いていると突然、“聖女”を名乗る少女に遭遇した。
「君が、シャルマンの聖女……?」
「はい、そうですよ!」
俺の問いかけに、フィリアという少女は元気よく、そう答えた。
この聖女は普通に、外を出歩いてるんだな……。
少女の明るい様子を見て俺が思ったことは、そんなことだった。
「えぇと、それで……皆さんはどうしてこの森に?あまり良くない噂のせいか、この辺りを通りかかる人は少ないのですが……」
フィリアが首を傾げながら不思議そうに訊いてくる。
良くない噂、というのはおそらく『迷いの森』のことだろう。
『一度入ったら、二度と出てくることはできない』なんて噂が立てばそりゃあ、いくら近道であったとしても気が引ける。
……目的としていたはずの場所に出れないわけだしなぁ。
それこそ、逆に遠回りになってしまう。
「あぁ、俺らはすぐそこの街から来た旅人だ。……旅と言っても、ついさっき始めたばっかなんだけどさ」
あれこれ思考を巡らせている間に、フゥが端的に話した。
「今日のところはとりあえず、泊まれる場所があればいいなーと思ってシャルマンを目指してこの森の中を歩いてたってわけだ。まぁ……初日から野宿ってのは、さすがに嫌だからな」
若干の溜め息を交えながら、フゥは簡単に説明してくれた。
こんなふうに、自然な感じで人に話しかけることができるフゥがたまに、俺は羨ましく思う。
……まさかそんな人が他人と距離を置こうとしているとは、到底考えられない。
「ふむ、なるほどなるほど……そう、ですね……生憎と、シャルマンに宿はないんですが、家でよければ、泊めることはできますよ?」
フィリアが納得の表情をし、平然とした表情で続けてそう言った。
んん?!?
今何か、ある意味すごいこと言ったなこの聖女……。
「えっ……それ……大丈夫、なんですか……?」
「いきなり見ず知らずの人を聖女様の家に泊めたら、さすがに村に居る皆さんも戸惑うのでは……」
シエラとクレアが不安そうに尋ねる。
「そのことなら、大丈夫ですよ!聖女である私が許可しちゃいますから!私から一言、皆さんに説明すれば、絶対に許してくれますよ」
強い自信を持って、フィリアはそう言った。
そんなフィリアの様子を見て、シエラが僅かに、どこか悔しそうな……悲しそうな表情を浮かべたのを、俺は見逃さなかった。
まぁ……無理もない、か。
───“聖女”というだけで全ての行動を束縛される存在と、“聖女”というだけであらゆる行動を許される存在。
シエラ・ホワイトとフィリア・ハピネス───この二人の“聖女”は、立場は同じであっても、それぞれの置かれた状況は全くの正反対なもので。
───どれほど頑張っても埋めることのできないような明確な格差が、そこには存在った。




