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Raison D'être  作者: 澪音
Ⅰ.すべての始まりは──── その③
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Page.18「準備のための準備」

 晩ご飯を食べ終え、一息ついたところで俺は、「旅をしないか」と皆に提案をした。


 するとフゥが───


「ん、俺は別に構わないけど……何かしらの計画があってのことか?その、どういうルートで進むのか、とか」


 ───と訊いてきた。


 フゥには事前に話してあるからおそらく、わざと訊いたのだろう。


 話を円滑に進めるために。


「計画……はないな、全くと言っていいほど。つまりはまぁ、“成り行きに任せよう”かなと」

「なるほど、そういうのも悪くないかもな。というかその方が面白そうだ」


 ……いや待て、フゥとばかり話してどうするんだ。


 他のみんなの意見とか、あるなら聴いておかないと。


「……えぇと、みんなは何か意見とか……あるか?てかそもそも、“行けない”って人、居るか?」


 一番最初に訊くべきだったはずなのに後回しになってしまった。


 少し後悔しつつ辺りを見回してみると、キリカがおずおずと手を挙げた。


「えぇと……私はその……止めておこうかなーって……思うんだけど……」


 理由を訊こうとするとフゥが僅かに目を細めたのが視界の端に映った。


 何か、思うことでもあったのだろうか。


「……そうか……何かやることとかあるのか?」

「まぁ……ある、かな」


 キリカが困ったような、そんな感じの表情を浮かべる。


 ……あまり無理に訊かないほうがいいのかもしれないな。


「ふむ……なら仕方ないか……シエラとクレアはどう?」


 先ほどからずっと黙って俺達のやり取りを見ている様子の2人に声を掛ける。


「んー……フゥ君が行くのなら、それについて行くかな……シエラは?」


 クレアがシエラの方に顔を向けると当の本人は、顔を伏せたまま何やら考え込んでいるようだ。


「……街の外に出れば、規則に反するのでは、ないでしょうか。それに……教会の外に出た以上、約束そのものは……守られたのでは───」

「───言ったか?」


 シエラの言葉を遮るように言う。


「え……」

「確かに俺は、約束を交わすときに『外に連れ出す』とは言った。けど別にそこに“範囲”は含んでないだろ。どこからの“外”か言ってない。だから……多分“街の外”でも大丈夫だろ。あ、時間の調整は必要だけどな……少しでも間違えたら大変なことになるのは目に見えて……まぁ最悪何かあればフゥに任せるし」


 俺の言葉に対し、フゥが「任せとけ」と言わんばかりに親指を立てて俺の方に腕を突き出しているのが見えた。


「……もしかして、あの子に言ってたことと関係があったり……?」

「あー……いや、そのときは『旅をしよう』って誘うことというか、そもそもそういう案すら考えてなかったな」


 ……シエラが自分に対して言っていた言葉が、なぜか妙に残って、消えてはくれなかったが。


「あの子?誰かに会ったの?」


 キリカが小首を傾げて訊いてくる。


「あぁ、キリカに会う前にちょっと色々あってな」


 ニーナ、だったか……“聖女”になるのが夢だと言ったあの子の名前。


 ……結局のところ、俺も教会側(アイツら)と変わらないじゃないか。


 何も知らない人に、“聖女(役割)”を押し付けたような───


「……ノア君……?」


 不意にシエラに声を掛けられ、強引に思考がそちらへと向けられる。


「ん……?」

「……えぇと……その……私も、旅に……ついて行ってもいい、ですか……?」


 若干しどろもどろになりながらも、俺にそう尋ねてきた。


「あぁ、もちろん」


 来てくれるなら嬉しいことこの上ないな。


 旅をするなら人数はそれなりに多い方がいいし。


 あまりに大人数なのは逆に困るけれども。


 まぁそんなことはさておき、とりあえず今は……


「クロエ君のことだからどうせ、出発するのは明日とか言い出すんだろうなー」


 突然キリカが俺の脳内を見透かしたかのように言う。


 ちょうどそのことについて考えようと思っていたところだったから少し驚いた。


 どうして分かった……。


「よく解ったな、俺がそう言うって」

「クロエ君、昔から思い立ったらできるだけ即行動するような性格だからね!」


 俺のことに関しては自信があるのか僅かに胸を張ってみせるキリカ。


 いや多分俺のことだけじゃないな……フゥのこともそれなりに知ってるか。


 あれ、あんまり知らないの……俺だけ?


 ……まぁいいや、別に知ったところで俺に何らかの影響が出るわけじゃないだろうし。


 そんなことを思いつつ俺は───


「えーと、キリカは残るって言ってたから仕方ないけど……フゥとクレア、あとシエラと俺で旅をするってことでいいか?」


 ───と全員の“意見”をまとめる。


 そしてみんなは「合ってる」とでも言うかのように力強く頷き返してくれた。


「よし、じゃあそうと決まれば準備をしないとね!フゥ君とクロエ君は自分たちでできるよね?」

「「当たり前だ」」


 キリカの一言に俺とフゥは同時に反論する。


 そんな様子を見てキリカは、クスッと笑うとそのまま、シエラとクレアを奥の部屋に無理矢理連れて行ってしまった。


「あの二人のことはキリカに任せておけば大丈夫そうだな」

「キリカだしな、大丈夫だろ」


 とりあえず女性陣のことはキリカに丸投げしておくことにしよう。


 今は自分のことを最優先に……と思ったが肝心なことを忘れていた。


「あ、会計長(キリカ)に旅するにあたっての資金、出してもらわないと」

「無一文、だっけか?そんな状態で旅しても七日と待たずして全員餓死するぞ」


 いや人間、もう少しくらいは長く生きれると思うぞ……テキトーに思ってるだけだけど。


「……我が家の財産、どのくらいあるんだ……」

「なんかそういう話始めるとキリがなさそうだから止めとこう、な?」


 フゥが慌てたように言う。


「そうか……?」

「そうそう。さて、俺も準備に取り掛かるとするかー」


 あ、またさらっと話逸らしやがった。


 そしていつの間にか居ないし!?


 家の中で“空間転移”を使うなよな……。


「はぁ〜……まぁ、資金のことは明日にして、俺も準備しないと……」


 気怠げな声を漏らしながらも、俺は自分の部屋に向かうことにした。


 ───ほんの僅かな、胸の高鳴りを感じながら。


 ……あっ、材料買ったのにクレープ作りそびれた!!!

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