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Raison D'être  作者: 澪音
Ⅰ.すべての始まりは──── その②
14/47

Page.12「見出された“可能性”」

 あぁもう、なんで“こんなこと”になるかなぁ……!?


 そんな感じのことを俺は、目前にまで迫ってきていた刃を避けながら思っていた。


 ……何があったのかを分かりやすく言うと、仲裁に入った途端、男達の一人が俺に何やら文句を言ったかと思うと今度はナイフを取り出し────今に至る。


 ちなみに、女性の方はさっさと車の中に避難させておいた。


 ナイフを振り回すなよ避けるの面倒だから……!


 ……応戦するしか、ないか。


 そんな思考が頭の中を駆け巡ると、俺は右手に意識を集中させた。


 ────刃が真っ直ぐ俺に向けて振り下ろされる。


 それと同時に、俺は右手を振り上げた。


────────────────────


 ────金属同士がぶつかり合う音が聞こえた。


「えっ……一体、何が起こって……!?」


 クレアが驚きの声を上げる。


 まぁ何も知らないヤツがクロエの能力(ちから)を見れば、誰だってそういう反応をするか。


 まるで、“手品”のようなその能力に。


「……“物体創造”の能力……いやでも、彼の能力は“物体操作”のはずじゃ?」

「アイツ……クロエが持ってる能力が()()()()だって、誰が言った?」


 いつもの癖で、からかうように言ってみる。


 今度は、普通にクロエの名前を出して。


「クロエは“本物”だ。……能力も組み合わせとかもそうだけど、アイツの場合、創れるモノとか操れるモノに限度ってものがない」

「……つまり、欠落した部分がなく何でも創れるし重さも関係なく操れるってこと?」


 クレアのその言葉に俺は頷く。


「多分、だけどな。クロエが無理だと判断すれば無理なんだろうけど……まだそういうのは見たことないし今のところは制限なしってことでいいと思うんだよなー」

「えぇ……」


 クレアが『それは制限なしかどうか分からないじゃない……』とでも言いたそうな表情で俺を見たが無視してやろう……。


「あ、そうそう。俺が分かってるだけでクロエの持ってる能力は全部で()()だ」


 最後の一つは……視認できるかと訊かれると微妙なんだよなー。


 クロエが無意識に作用させてるってのがあるからいつ使うか分からないし。


 ……てか、いつから俺は“能力者が能力を使用している”ってことを感知することができるようになったんだっけ……?


 “悪魔”になってから、か?


 んー……思い出せないな……。


-----------------------------------


 “────“結界”って、簡単に言えば魔力を集めて“新たな空間を作る魔法”なんだ”


“……厄介なことに無理矢理壊されたら中に居る人に影響が出る恐れがあってさ……特に、“聖人”や“聖女”の場合は一般人の数倍出やすいみたい。まぁ、どんな影響が出るのかは知らないけど……”


-----------------------------------


 不意に脳裏に、さっき考えていたこととは全く関係のない事柄に対する、一つの“可能性”が過ぎった。


 ────試してみる価値は、ありそうだ。


 ……上手くいくかは、分からないけど。


「まぁ、そのうち分かるといいけどな……とりあえずちょっと“試したいこと”ができたから一旦、この話は中断するぞー」


 と言いつつ俺は、クレアにもたれかかり、規則正しい寝息をたてて眠るシエラの方を向き、そして────


────────────────────


 二本のナイフがぶつかり合い、甲高い音が響く。


 俺が振り上げた右手にはナイフが一本、しっかりと握られている。


「なっ……どこから出しやがった……?!」


 ナイフを振り回していた張本人である、恐らくリーダーなのであろう男が驚愕で目を見開きながら言う。


 ……どこからでもないんだよなーこれ。


 実際、俺にも分からないからな。


 強いていえば“空間”から、か?


 ……まぁそんなこと、今はどうでもいいや。


「一応言っておくがタネも仕掛けもないからな、これ。……さて、あと何本くらい“浪費”すればここから離れてくれるんだろうなぁ……?」


 そんなふうな言葉を放つ俺の周りには六、七本ほどのナイフが空中を漂っている。


 俺の能力を示すには、こんな感じで十分だろう。


「な、なんなんだよコイツ……!?」

「ヤバいですよ兄貴!このガキ、能力者ですよ!」

「ど、どうする?今ならまだ……」


 おい今誰かガキって言ったなガキって。


 それと、今更逃げようとしたところでもう遅いっての……。


 ……あーこれ多分、俺も巻き込まれるんだろうな……そして俺が“悪役”に回らないといけないんだろうな。


 などと、背後から迫り来る気配に若干の恐怖を抱きつつそんなことを考えていた。


「────“聖女様”の前で醜い(あらそ)いを行うのはお止めなさい!」


 神父の口から発せられた予想外のその言葉に、俺は思わず振り返った。


 視線の先には、不機嫌そうにこちらを見る神父と、その背後(うしろ)に、フードを深々と被り、何やら気まずそうな表情を浮かべているシエ……って、あれ?


 俺はある“異変”に気がついた。


 シエラの姿が元に戻ってる……。


 ────一体、俺の知らない間に何が起きたんだ?

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