7. 初戦闘
俺は今悲鳴が聞こえた場所に向かっている。かなりのスピードで…。最初のほうは力加減が分からず木にぶつかりそうになったが、今はだいぶ慣れてきた。自分がこんなことが出来ることに感動しつつ、次のことを考える。救うべき対象の数、倒すべき敵の数、そして倒し方。色んなことを考えていると…
「!?」
だいぶ近づいたことで倒す敵が分かった。…人だ。さっきの女の子の悲鳴とは違った男達の笑い声が聞こえる。盗賊の類いか…。なら倒すのではなく拘束しないとな。なるべく人は殺したくない。俺は雷魔法で気絶させることにする。イメージするのはスタンガン。両手の親指と人差し指の間に電気をはしらせる。そうこうしていると前方の視界がひらける。
見えた!男が4人、その奥に女の子が木を背にもたれかかっていた。端には豪華な馬車の残骸と兵士のような人物が10人ほど血を流している。幸い、男達の背後をとるように近づいているので気づかれていない。素早く近くにいた男2人の首を両手で掴む…
「「がっ!?」」
男2人は同じような反応をし地面に倒れ、痙攣する。ちゃんと気絶しているようだ。そのままの流れであとの2人の男の首を掴み気絶させるようとする。
「くそっ!なんだお前は」
しかし、一番強そうな格好をした男に身を屈め避けられてしまった。その男は俺から離れ距離をとる。もう一方の男はしっかり首を掴むことが出来、痙攣している。
「来るな!近づいたらこいつを殺すぞ!!」
「ヒィィ…」
あろうことかその男は女の子を人質にとる。女の子は恐怖で顔面蒼白だ。
「こいつを助けに来たんだろう?なら大人しくこれでも付けてろ」
男はそういうと服の中から首輪のようなものを投げてくる。
「それは奴隷具だ。それを付けるってんならこいつは見逃してやる。お前もなかなか上玉だしなぁ」
くそっ!完全に油断していた。避けられるなんて微塵も思ってなかった。ていうか、俺チート貰ってんだしなんでこいつ俺のスピードについてこれるんだよ。こいつもチート貰ってんのか?
「オラァ!早くしろ!」
ヤバい。なんとか対処法を見つけないと…。魔法で攻撃したら人質も巻き込んでしまう。なにかないのか?近寄らず、人質を巻き込まないですむ方法…。……あったあの魔法を使えばいいんだ。俺はイメージする。
「おい聞いてんのか!?さっさとしないとこいつが…」
「彼女がどうかしたか?」
「!?なっ、いつの間に…」
俺は今女の子を片手で抱き止めている。女の子は俺の声が近くで聞こえたからか顔を上げ「えっ…?」と声をもらし呆然とする。その顔がなんとも可愛らしい。ずっと見ていたい気持ちになるが男に意識をもどす。
「お前なにをした!?」
男は鞘から剣を抜き突進してきた。こっちがなにをしたのか分からないのならもっと慎重になるべきだろうと思いながら俺は答える。
「なにをしたって?そりゃ…」
「…こうしたのさ!」
「!ぐっ!?」
俺は答えながら男の後ろに転移する。そう、俺が使ったのは空間魔法だ。そして、素早くさっきの男達と同じように雷魔法で気絶させる。
俺は魔法を使った初めての戦闘を終え、安堵の溜め息をつく。人と闘うことになるとは思わなかったが、殺すことなく無力化出来てよかった。
こうして俺の初めての戦闘が終わった…。