15. 正体
仕事に疲れて更新がだいぶ遅れました…。
すみませんでした。
なんで?どうして?
俺は王様の言葉で固まってしまった。王様は真剣な顔で口を開く…
「まずお前が記憶喪失じゃないと疑ったのはテーブルマナーを"昔"習ったと言ったからだ。それとお前自身の話になったとき様子を観察させてもらった。人は嘘をつくとき右上を見ることが多い。お前は右上を見て思いだそうという振りをしていた」
発言は俺の失態だったが、目の動きで嘘を見破られるのか。なんなんだこの人…。
「まぁ、他にも嘘をついていると分かるところはあるがな。俺も立場上いろんな人を見てきた。そこで自然と身についた技術だ」
確かに王様という立場上なにが国の脅威になるか判断しないといけないしな。
「次にお前が獣人じゃないと思ったことなんだが…。これは俺のただの勘なんだが、お前は自分自身の耳と尻尾をちゃんと認識できてるか?」
「それってどういうこと?」
「まぁ、簡単に言えば獣人の耳と尻尾は感情を表しやすい。それ故に獣人は耳と尻尾をコントロールできる。感情が表にでないようにな。だがお前の耳と尻尾は忙しなく動いていた。特に嘘をついているときは緊張のあまりかずっと耳と尻尾が立っていた。それじゃあ嘘をついていると分かりやすい」
「あっ」
完全に忘れていた。前世じゃ耳は動かないし尻尾なんてなかったからな。
「図星か…。とにかくこれがお前に対する質問の理由だ。どうか話してはくれないだろうか」
こっちの世界に転生してまだ一日目なのにな…。でもこの人たちになら話しても言いかもしれない。
「うん、私は記憶喪失じゃない。ちゃんと記憶はあるよ」
「どうして記憶喪失なんて言ったの?」
エリスが困惑しながら俺に聞いてくる。この中じゃあエリスに最初に記憶喪失って言ったからな。
「それは私がこの世界に来てまだ一日目だからだよ」
「それって…」
「私は転生者なんだ」
「!?」
3人はかなり驚いている。王様もここまでは予想できてなかったようだ。王様を見ているとなんだか自分が勝ったような気分になる。
「私はある事件に巻き込まれ、一度死んでいる。でも女神に力を貰ってこっちの世界に転生してきたんだ。こっちの世界のことはよく分からない。だから記憶喪失って言ってたんだ」
「そうだったのか…」
「ちなみに元いた世界は魔法やモンスターがいない平和なところだったよ。もちろん獣人もいないから私が獣人になったのも今日が初めて。だから王様が私に違和感を感じたんだと思う」
「そんな理由があったんだな。なんにせよ俺の質問に答えてくれてありがとう」
「いいよ。私もお世話になるんだしいつかはちゃんと話さないといけないって思ってたし」
それにまだ話せてないこともあるしな。俺が男だったことや2年後の勇者召喚のことも…。
「そんなに暗い顔をするな。また話せる機会に話してくれたらいい」
俺はその言葉に反応し王様を見る。まだ隠し事があるってバレてたか。いや、エリスと王妃様の顔を見るかぎり全員にバレてるな。
「うん、話せる時がきたら必ず話すよ」
なんだか湿っぽい感じに終わってしまったな。なんて思っているとエリスが両手をパンッと合わせ…
「もう食事も終わったし一緒にお風呂に入ろう、お姉ちゃん」
えっ…。
「そうね、獣人になったばかりなら頭の洗いかたとか尻尾の手入れの仕方とか知らないだろうし獣人のメイドに習いなさい」
王妃様も提案してくる。ちょっと待って頭の整理が追いついてないから…。
「そうだったね。ならセシルに頼んでみようかな」
俺は男なんだよ?それなのにエリスとお風呂は駄目なんじゃ…。あっ、俺は今女だったな。
「それじゃあ一緒にお風呂に入るよ、お姉ちゃん!」
エリスからの2回目のお誘い。エリスの天使の微笑みも今は小悪魔の微笑みに見えてならない…。