14. 食事
「うっ…、うぅん」
目が覚めると知らない天井。外が暗いので夜なのだろう。まだ意識が覚醒しきっていない頭でなにがあったか思い出す。
そういえば城に住むことになったんだっけ。確か王様の言葉で泣いちゃって眠くなって…、ってかなり恥ずかしいな。俺が恥ずかしさで悶えていると隣からスゥー、スゥーと音が聞こえる。なんだろうと反射的に振り向くと…
「おわぁっ!!」
「ん、ふあ~ぁ。あ、お姉ちゃんおはよう起きたんだね」
そこにはエリスのドアップの寝顔。俺の声で起きたエリスは目をこすりながら話しかけてくる。その仕草がなんとも可愛らしい。そうじゃなくって…
「なんでエリスが隣で寝てるの?ていうかここどこ?」
「ここはお姉ちゃんの部屋だよ。メイドさん達に運んでもらってお姉ちゃんの寝顔見てたら私もいつの間にか寝ちゃってたみたい」
「そうなんだ…」
寝顔見られてたのか…恥ずかしい。
「お姉ちゃん顔赤くして可愛い~」
エリスがいじってくるので聞こえてない振りをするために部屋を見回す。部屋は一人部屋にしては広い。しかしクローゼットとベッドと机しかない。こっちの世界じゃあこれが普通なんだろうか。
なんにせよ、もう見るものがない。エリスの執拗ないじりがかわせなくなってきた。どうしようかと困っていると
「エリス様、クラウディア様お目覚めでしょうか」
ノックと共に女性の声が聞こえる。渡りに船、とばかりに俺は返事を返す。エリスはムスッとしていたが気にしない。
「お食事の準備が整いました。ご案内します」
俺達は部屋から出てメイドに着いていく。城内はかなり広く着く頃には何回角を曲がったか分からくなってしまっていた。メイドが扉を開けて中に入ると長いテーブルの奥の方に王様が座っていた。右の方には女性が座っている。エリスは左の方に移動しだしたので俺も着いていく。
「あなたがクラウディアさんかしら?私はエリスの母親のユリアナ・ハワードよ。これからよろしくね」
俺がメイドが下げた椅子に座ると女性…王妃様が話しかけてきた。
「はい、こちらこそご迷惑をおかけすると思いますがよろしくお願いします」
俺の精一杯の敬語に王妃様は普通に話すようにと言った。王妃様とそんなやりとりをしていると料理が運ばれてきた。どうやら今運ばれてきたのは前菜で料理はフルコースみたいだ。
実は俺は前世でテーブルマナーを授業の一環で習っていた。俺は前菜、その次のスープとキレイに食べすすんでいく。
「クラウディアはテーブルマナーを心得ているのか?エリスも見習ってほしいものだ」
「うん、昔習ったんだ。エリスだってキレイに食べれてるよ」
王様に褒められてつい上機嫌で返してしまう。エリスがムスッとしていたのでフォローをしながら。
「…そうか」
そこからはエリスが俺の話しをしだした。どうやって俺が盗賊を捕まえたか少し誇張しながら話す。もちろん空間魔法のことは言ってない。二人は感心しながらエリスの話しを聞いていた。
エリスの話しがあらかた終わると俺のことについての話しにうつる。まぁ、記憶喪失という設定なので覚えてないの一点張りだったが。
そうこうしていると料理をすべて食べ終わっていた。すると王様はメイド達に部屋から出るように指示を出す。これがここのやり方なんだろうかと思ってエリスを見るがエリスも首を傾げている。なにが始まるのかと思っていると王様が口を開く…
「俺から質問だ、クラウディア。人払いはした。すべて話さなくていいが正直に答えてくれ。…お前は本当に記憶喪失なのか?そして本当に獣人なのか?」
その言葉に俺の心臓がドクッと跳ねた…。