13. 家族
首が痛くなるほど見上げないと一番上が見えない城。その城の近くまで来て俺は悩んでいた。
「これって普通に入れるところじゃないよな?」
俺なんかは一生縁がないところ。そこに足を踏み入れようとしている。まぁ、俺は1回一生を終えたんだけどね。…とにかく、エリスが門兵に話しをつけてくれていることを祈りつつ俺は門に近づく。
しかし、俺の不安は杞憂に終わった。なぜなら門兵と一緒にエリスが立っていたからだ。門兵はガチガチに緊張している。そりゃあ、エリスになにかあったら罰せられるもんな。俺は門兵の為にも急いでエリスのもとに駆けつける。
「クラウお姉ちゃん!」
「!!王女様危険です!離れてください!」
エリスもこちらに気付き近づこうとしたが門兵に止められている。
「大丈夫です。この人が私の待ち人なんですから」
「そうだったのですか。…フゥー」
あきらかに小さなため息をつく門兵。まぁようやく不安が解消されるんだからな。仕方ないこととは言え王女の前でため息をつくのはいかがなものか。
「早く行こう、お姉ちゃん」
まぁ当の本人は気にしていないようなので大丈夫だろう。エリスは俺の手を引いて中に入っていく。道中はエリスと話しをしたり、リアルメイドを見てちょっと興奮したりした。
今俺達がいるのは謁見の間の前。エリスが王様に話しをしたら会ってみたいということになったそうだ。目の前には豪華な扉。その先に王様がいるのかと思うと緊張する。
「エリスです。クラウディア様を連れてきました」
エリスはノックをすると用件を伝える。
「入っていいぞ」
中から男の声が聞こえる。その声と共に待機していたメイドが扉を開けてくれた。中に入ると奥の方に豪華な椅子に座った男の人がいる。
「私はこの国の王、エドウィン・ハワードだ。お前がエリスを助けてくれたクラウディアか?」
「はい」
「お前がいなかったら今頃どうなっていたか…。感謝する」
王様は頭を下げてくる。
「お止めください。私は当然のことをしたまでです」
「そうか。だがなにか褒美をやらないとな」
「それならここに住んでもらってはいかがですか?」
王様が考え込んでいるとエリスが提案する。
「そうだな。エリスの話だと記憶を探すために旅をしているらしいしな。大方ここに急いで向かっていたせいで今日泊まる宿もとってないんだろう?」
そういえばそうだと思い頷く。
「ならここを旅の拠点にしてもらっていいぞ。それとここに住むからには俺達は家族だ。本当の両親にはかなわないだろうが俺のことは父親だと思ってくれていい。もちろん敬語も無用だ」
俺は王様の言葉が嬉しかった。俺にはたぶんこの世界に肉親はいない。
「ありがとう…ございます」
「こら、もう敬語を使ってるじゃないか」
俺は自然と涙を流す。
「…ありがとう」
「うん、それでいい。それでいいんだ」
王様は俺に近づき背中をさすってくれる。エリスもいつの間にか俺の左手を握ってもらい泣きしているようだ。
俺は我慢できず声をだしながら泣いた。泣いていると今日だけでいろいろあったせいか眠くなってきた。
「疲れただろう。もうおやすみ」
王様は俺の様子を感じ取ってくれたのだろう。俺は感謝しつつ眠ってしまった。人の温もりを感じながら…。