暑い熱い夏
蝉がうるさい日だった。それは覚えている。というか、それしか覚えていない。
いや、もう一つだけその日のことを覚えている。
彼女の笑顔はきれいだということだ。
^^ ^^
季節は夏、夏真っ盛りである。
「あぢぃ~」
前の席の田村がそんな声を上げた。
「当たり前だろ、夏なんだから」
そう、今は夏なのだ。夏ならば暑いのは当たり前だと思う。
「でもさ~でもさ~、暑いもんは暑いだろ~。それになんでこの学校はクーラーついてないんだよ~。溶けるよ、溶けちゃうよ~」
「古い学校だから金がないんだろ。ていうか、少し黙ってろよ、余計暑くなるし邪魔だから。」
クーラーなんてものこんな田舎の学校にあるわけがない。それはもちろんあれば嬉しいけどこの学校には不釣り合いだろう。俺たちの代で築一二八年になるこの学校には扇風機がお似合いだろう。
「なんだよー、邪魔はないだろ邪魔わ。それに、お前今何にもしてないじゃんかよ?て、お前また澄川のこと見てんのかよ。ほんと好きだねー、す・み・か・わ」
「っ!う、うるさいな!声でかいよ!聞こえたらどうすんだこの馬鹿!」
「ほんとのことだろホントの~。」
かなり、かなり癪だが俺は田村が言う通り澄川が好きだ。
なんだかんだ中学校から同じ学校で俺の好きな人。それが澄川だ。髪はショートボブの前髪がぱっつん。世間一般には少し地味と言われる容姿をしている。でもその地味なところがいい。いいんだ。
「あ、なんか怒ってる」
きっと彼女が話しているクラスメイトにからかわれているのだろう。
だけどそんな怒った顔も、
「かわいいなぁ~」
思わず声が出てしまうほどに、かわいい。それは俺が澄川のことが好きだからかもしれないけど。
「相変わらずキモイなー、澄川のこと見てるお前。
あー、余計暑くなってきたー」
何と言われようとも俺は澄川が好きだ。
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