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代用  作者: 佐伯
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その様子はDVDのスロー再生を見ているようだった。結果、ペアーグラスの俺の奴の取手が欠けた。俺がはじめて買ったプレゼントだった。「ごめんなさい」と謝るゆいにそれ以上言えるはずもなく、ぶつけようもない感情を発散させないといけないから俺は外に出かけた。背中越しにすすり泣きが聞こえたが、スニーカーを突っ掛け、外に出る。夕暮れ時なのもあるのかなあ、見上げる空は妙に重々しかった。


10分くらい歩いた、出た時にちらつきはじめた小雨が土砂降りに変わった。幸いにも近くにコンビニがありビニール傘を買う。ついでにレジ付近にある値下がり品のホワイトデー関連の商品が目についた。似たようなグラスがあったのでついでに買う。多少違うが代用になる、いいアイデアだと思った。コンビニを出ると雨で巻き上がった匂いが鼻につき、くしゃみを1つ、見上げれば、晴れ間が、西の空が赤い。帰ろう。


「ただいま」あのさ、これ代わりにしよう。値引きのシールをはがした商品を渡す。「ありがとう」とゆいは言った。でも代わりにはならないよ、と付けくわえた。せっかく買ってきたのにと寂しい気持ちになるが、俺は「そうだね」と返した。




それから数年が経過した。俺の束縛が原因で、少し距離を置いてしまった事もあったけれども、それは時間が解決してくれたらしく、本日めでたく婚約を済ませた。何度となく体を重ねたが今日は特別だった。結局あのコンビニで買った奴は封を開けていない。だっていらなかったから、「……」愛しているの代わりに唇をふさいだ。その傍らには、ペアーグラス、片方のグラスの取手は取れやすいから、オブジェとして使っている。【おわり】

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