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吸血物語  作者: アカマツ
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 なんでこんな所に女の子が...






 今の時間帯、小学生はおろか中学生も家で暖かい布団に包まって眠っているだろうに、目の前にいる女の子は一体、何故こんな所で布団も被らず眠っているのか








(もしかして...家出か?)







 寝てたらいつの間にかこの時間...とは考え難い。それに、かくいう俺も小さい頃家出した時はよくこの公園に来ていたことがあった。






 小学生のやんちゃ盛りだった頃、四人兄弟で末っ子だった事もあり、好き放題遊んで、騒いでいた俺は何かと負けず嫌いだった。無論兄貴達も負けず嫌いで、そんな兄弟が仲良くやっていけるわけがなく、毎日のように兄貴達と喧嘩しては家出を繰り返していた。




 まあ今となっては家にいるのは俺一人。両親は夢だった沖縄への移住。兄貴達は一人、また一人と家から出ていってしまった。



 ...別に寂しいと思ったことはない。ただ少し、家が広く感じたりすることはある。








 意識を切り替え、改めて目の前の女の子に目を向ける。






 そこそこ長いだろう黒髪をマフラーの様に首にかけ、まるで猫...いや、ダンゴムシの様に体を丸め、ベンチに収まっている。




 今は六月の中旬。半袖半ズボンでも暑い日が続く日々ではあるが、時折肌を撫でる風が冷たく感じる日もある微妙な季節。今日はどちらかと言うと肌寒い日だと思うのだが、この少女、ぐっすり眠っているのか、すぅすぅと寝息を立て起きる様子など微塵もない。





 恐らく家出した後、この公園で少し時間を潰そうとしていたらいつの間にか眠ってしまった。といったところか。







 何にせよこんな所で寝ていたら風邪を引くかもしれないし、この時間に幼い少女が公園で寝てるとなれば、事件の一つや二つ起きたって何らおかしくはない。









 ...ん?事件...








 若干頬が引きつりながらもゆっくりと足元に視線を向けると、案の定やっさんと目が合う。





 まさかやっさん...俺を犯人に仕立て上げようとしているんじゃ





 肯定だといわんばかりに、にゃー、と一鳴き






 更に頬が引きつり、後ろに後ずさる。





 すると何を思ったか、やっさんは少女が寝ているベンチに飛び乗り、綺麗に切り揃えられた前髪に向かって高速猫パンチを繰り出した。




 パシンパシンパシンパシンパシンパシンパシン




(ちょッッ! やっさんなにしてんのおぉぉ!)






 慌ててやっさんに近づくとひらりとその場から離れ、一定の間隔が空いた所で立ち止まり、またじっとその鋭い双眼で睨みつけてくる。負けじと睨み返していると




「っんん...」





 ッッッ!!






恐る恐る少女に目を向けると先程までは綺麗に揃っていた前髪はボサボサで、今にもその瞼が上がろうとしている。






 このままだとまずい!今ここで少女が起きて悲鳴の一つでもあげたりすれば、


俺の人生は...「ニャー」


終わ...「ニャー」


...「ニャー」







 後ろを向くとお座りの格好で佇む一匹の黒猫。






ああ、黒猫って不幸の象徴とか言われているけどその通りだなぁ

現実逃避していた所で鈴を鳴らしたような眠たげな声が聞こえた。


 









「...あれ? あなた...だぁれ?」










 この日を境に青年の日常は崩れ去った


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