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吸血物語  作者: アカマツ
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 ある日の夜。



 空はすっかり黒く染まり、月は雲に隠れ、辺りを照らすのは街灯のみ。




 青年は静寂の中その夜道を一人で歩いていた。




 かなり遅い時間なのか車が走る音もあまり聞こえず、カツカツ、と青年の足音だけが響いていた。




(はぁあ こんな時間までバイトとかシャレになんねえよ...)




 スマホを見ると時刻は12時を過ぎ、あと5分で1時を向かえるといったところ。本来ならば11時に帰してもらう筈だったのだが、人手が足りなく日曜日という最も忙しい曜日だったため、もう少し居てくれないかと店長に泣き付かれ、終わった時にはこの時間である。




 いつもならこの時間帯、軒並みの続く通りは各家々の光で夜道を明るく照らしているのだが、今見る限り明かりがついている家は一件も無い。



 そして普段はこの時間、遊び帰りの高校生、大学生。はたまた帰宅途中のサラリーマンがちらほら見えるこの通りも人気がなく静まり返っていた。






 こうあれだ、いつもと違う雰囲気の道というのは調子が狂う。




 何か妙に後ろが気になるし、前から人が歩いて来ると息が止まり、電灯の間の暗闇に何か危険なものが潜んでいるのでは無いかと勝手に身構えてしまう。




 周りからみると、辺りをキョロキョロしながらビクビク歩き、突然身構える青年のほうがよっぽど危険なのだが、その事実に青年は気が付いていない。






「ニャア〜」





「ッッツ!!!???」





 前後に警戒心を集中していた最中、突然の真横からの攻撃に悲鳴を押し殺しながら慌てて飛び退く。






「って お前かよ」





 真横の塀の上に佇んでいたのは全身真っ黒の毛に覆われたずんぐりとした猫。




 ここいらでは野良猫がよく食べ物求めて集まってくるため、かなりの野良猫が生息している。そして今目の前にいる猫が野良の中でボス的な存在のやっさんだ。

 無論名前を付けたのは俺。この鋭い眼つきにずんぐりとした体型、真っ黒な体、そして...




「おっと危ない」




 この手の速さ。指を少し近づけただけで高速猫パンチを繰り出してくる。そのせいで小学生、中学生はやっさんに触ろうとした瞬間に迎撃されてしまう。かく言う俺もやっさんに触れることが出来ていない。後ろからこっそり触ろうとしたこともあったが、ある一定の距離近づいたところでいきなり後ろを振り向きキッと睨みつけられ猫パンチの押収にあったのは記憶に新しい。




 しかしこの猫おばさんには甘く、昼頃に帰るといつもおばさんに囲まれわしゃわしゃと触られまくっている。やはり餌の力は偉大だということなのか...今度マタタビでも持ってこようか。




 そんなことを考えていた最中ひらりとその体型に似合わぬ動きで降り立ち、堂々と道の真ん中を歩き出した。なんか着いて来いといっているみたいだなぁ、とぼんやり考えているとその考えはあながち間違いで無いのか、しきりに後ろを向き、早く来いとばかりに睨みつけている...気がする。




(この時間帰ったところであとは飯食って寝るだけだしな...)



 たまには寄り道してみようとやっさんの後を着いていった。







 ーーー5分後ーーー






 やっさんの後を着いて行くと公園に辿り着いた。そこは俺の家から50mと離れていないそこそこ大きな公園だ。遊具なんかはほとんどないが、昼間になると小学生がサッカーやら野球やらでとても騒がしくなる。




 小学生だったころは俺もここで遊んだなぁ、と過去の思い出に浸っていると、そんなことお構いなしにやっさんは公園の中に入っていっている。



 これ以上着いていっても時間の無駄かなぁと家に帰ろうとUターンすると、またさっきの見た目に似合わず可愛い鳴き声が響いた。




 振り返って見ると、公園の奥にある屋根付きのベンチの背もたれの上に器用に乗っているのがかろうじて見える。姿は闇に同化して見えないが二つの双眼が今もこっちを見ていて、ぶっちゃけかなり怖い。





 ここで逃げたら更にヤバイことになる気がしたので恐る恐る近づいて行く。

 ここがゴール地点なのか目の前に立っても歩き出す素振りはなく、ユラユラと尻尾をくねらせている。





(ここになにがあるんだよ...)





 若干苛立ちを露わにしながらやっさんを睨みつけると、その先に何かいるのに気がついた。





 もう一度やっさんを見るとひらりと降り立ち俺の隣に佇む。その先を見るよう促しているようでそれに従い恐る恐るベンチの上を見る。





「なっ!」








 ベンチの上で少女が微かな寝息を立て眠っていた




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