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頭文字に意味ない




「ところで、この穴はなんなの」


セトに報酬の件を聞いてみたかったが、考えてもいないようだったので、とりあえず保留でいいや、と千明は違う話題を口にした。

足元に無数に空いている穴という穴は、なにかの巣穴のようで、そこからいつ何かが這いずりだしてくるかと落ち着かない。


「あ?……ああ、こりゃサラマンダーの雛の巣穴だ。今は休眠期だから、活動はしてねえがな」


セトは穴のひとつを足でさくりと埋めてみせた。


「さらまんだーってなに?」


なんとなく聞いたことがあるような名前だが、それが一体どんなものなのか千明には見当もつかない。

セトは一瞬だけ意味深な視線を千明に送った後、サラマンダーについて説明してくれた。


「砂漠に住む火蜥蜴だ。母親のもとで卵で孵化した後、それぞれ砂中に潜って眠りにつく。そこで五十年くらい眠ってから、巨大な体になって出てきやがるのがサラマンダーだ。そこから大体百年くらいは生きるが、休眠期から無事に目覚めるのは全体の三割くらいしかいないといわれている。外見は……まあ、そのうち見る機会くらいあるだろ。どうしても気になるなら、珍獣辞典でも買ってやるよ」


なるほど、あのグレアムがあのラインで立ち往生して追ってこなかったのも、このあたりがサラマンダーのテリトリーだからなのか。


「火蜥蜴ってことは、火を吐くの?」


五十年も休眠してるなんてすごい、蝉もすごいが、サラマンダーもすごい。


「吐くどころじゃねえ。全身火山みたいに燃えてやがるぞ」


おおおおファンタジー!!

未知の生物に、妙にテンションが上がる千明だった。絶対にお目にかかりたくはないが、自分のこの足元にそんな未知なる生物が眠っているなんて、想像するだけでテンションが上がる。

目には見えない深い砂の中で、巨大な生物はどんな夢を見ているのだろう。



「他にはどんな生き物がいるの?」


まるで生物の授業のようだった。

小学生の頃は、はやく惑星間移動が常識になって、火星には〇〇という名の宇宙人がいて、金星にはこんな性質を持った宇宙人が生息する、的な教科書が早くできないかと密かに期待していたものだ。

結局は敵わない夢になったが、こんな場所でその夢のような体験ができるとは思っていなかった。

唐突に瞳をきらきらさせだした千明に、セトは少しだけたじろいて言った。


「他にはって……そりゃ数えきれねえほどいるだろ」


だからそれをピックアップして教えて欲しいのである。

千明の輝く瞳に負けたのか、セトは考えるように空を仰いだ。


「強いて挙げれば、そーだなあ、……遭遇する率が高くて低いのがゴーレムだろうな」


どっちだ、と思ったが、ゴーレム、という単語に千明の耳が反応した。

聞いたことがある。ゲームだか漫画だか映画だか定かではないが、聞いたことがあるぞ。


「それ、地球でも聞いたことある。なにそれ、泥の塊なの?頭文字を削ると死ぬの?」

「泥じゃねえ、石だ。学者の見解的には、古代遺跡が人型をして動いているらしいが詳しいことは解明されてねえ。頭文字ってなんだそれ、そんなんで死んだら苦労してねえ」


なんだ、文字は関係ないのか。確かうっすらとそんなことを聞いたことがあったような気がしたのだが、こちらの世界と地球のでは呼び名が同じなだけで、違う存在なのかもしれない。


「このゴーレムは全生物を敵と認識してる。相手が人間だろうが獣だろうが見境なしに攻撃してきやがる。大昔の古代人が造ったらしいが、厄介なもん遺しやがったもんだ。この世界の三割ほどの建造物損壊、死亡事故の原因がゴーレムだといわれているからな。お前も遭遇したら逃げろ。とりあえず逃げとけ」


果たして逃げ切れるだろうか。

純粋に疑問に思ったが、とりあえず千明は頷いておいた。


「……まあこの話はまた暇なときにしてやる。今はとりあえず先へ進むぞ」

言われて、そういえば野宿することになったのだと、千明はやっと気付いたのだった。





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