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【Roof on the Roof】

作者: いさむし

短編小説で投稿してはみるものの、続きがある風な終わり方をします。どうぞ、心からお楽しみ下さい。続き願望な方がいれば、一言感想を。

-屋根の上-

僕はこんなところで、飛び跳ねたり、叫んだりしている。どうしてもこうしても、最善の策がこれぐらいしか思いつかない。助けを呼ぶ以外に助かる手段はないと判断した。しかし、諦めは当に付いていた。屋根から飛び降りるしかないのか。もしも、それで死んでしまえば、ただの飛び降り自殺、真面目な話、そうはなりたくない。自ら命を断つなんて願い下げだ。


「やーね、大丈夫だよ。ここから飛び降りたとしても、また戻ってくるからさ」


何かがやってきた、失礼な言い方だがこの状況で冷静にはなれない。相手が親しみのある友人や家族ならまだしも、見知らぬ人となれば警戒するのが僕の心理だ。


「・・・」

僕はあくまでも沈黙を制して、観察する。魔女が被るようなとんがり帽子に、自らを縛るようなストイックな首輪、刃物で切り刻まれたようなパーカーとジーンズ。隙間からは肌が見え隠れしていた。人間、なのだろうか。


「ふーん、だんまりになっちゃうの。面構えでわかっちゃうけどさ、突っ込みの余裕もなさそうね。そりゃそっか、誰しも生きる術がないって理解するや否や絶望するしかないよね、お姉さんもわかるよー、うん、よくわかる。だから特別にもう一つの選択肢をあげようと思う。不安がらないで、見返りは求めないから」


彼女はしゃがんで屋根をもぎとった。もぎとって口に放りこんだ。カリッコリッ、咀嚼音が響く。無機物を食べるとは正気の沙汰じゃない。しかし、彼女がどういう性でどういう変食家だろうが一切合財どうでもよくて、振り話自体はとっても有益そうに思えた。突破口、一筋の光。ここで躊躇う気持ちはやぶさかでしかない。


「食べるかい? こういうのは口にしてみりゃ何とやらだ。見た目に怖気づくのも仕方ないけれど、そこは一歩踏み出してみな。ここでは”前進するしか生きれないんだから”」


返事を遮られた。口を開けて一言、発声しようと思ったのに、その寸前で覆い隠された。わざとか、あるいはマイペースなだけか。どちらにしても質が悪い、と感じてしまったが追求をするだけ不躾だ。


「毒が入っているかもしれないので遠慮しておきます」


笑われた。おもいっきり吹かれた。屋根が空を舞って落下する。表現が大胆だけれど、屋根の一部とか屋根の黒い部分とか言ってもさらに混乱を招いてしまう。誰に配慮したかと言えば当然、ぼく自身しかいない。変に添加するよりも、屋根は屋根と考えたほうがスッキリする。屋根の味がわかれば呼び方を変えるけれど、食べる気はさらさらないし、お腹は空いていない。


「あはは、仏頂面にしては、きみは面白いことを言うね。毒が入っていたら私はもう死んでるじゃないか。もしかすると即死系とか猛毒じゃないってだけで、多量摂取すれば死ぬっていう毒かもしれないけれど、それはありえないよ。予め断言しといてあげる。プラスアルファ、屋根に毒を盛る輩がどこにいるんだ。君は屋根を食べて死亡した事例でも聞いたことがあるのかい。あるんなら疑いをかけてもいいけれど」


-屋根の上(1-2)-

毒物の可能性。たしかに考えすぎなところはあった。彼女の言うとおり、毒が盛り込まれた屋根を食べて死亡したというヘンテコな事件は耳にしないどころか、世界中どこを探してもないと思う。あるなら僕も知りたい。


「そうですね、あれば僕も知りたいです」

平常を装いながら、屋根を引っ張りとり、丁寧にかぶりついた。安全性が確認されたなら、食べる。その気はないと先ほど諭したばかりだけれど、空腹ではないと言ったけれど、いつかは食べなければならないとも思っていた。それが今になっただけの話だ。コリッカリッ、僕の味覚がおかしくなければ屋根は甘い。まるで氷砂糖だ。


「あれれ、遠慮してたんじゃないのかい。さっきのは嘘八百でした、ごめんなさいというオチではないだろう。今日がエイプリルフールでなくたって、寛大なお姉さんは嘘ぐらいは許すけれど。私だって嘘をつくし、嘯きもする。まぁ、嘘は知られなければ嘘とはなりえないけどね」


彼女は末語を言い終えて、ウインクをした。僕は相槌も打たずに、屋根を噛み砕く。もしくは咀嚼音とウインクが同調してしるのかもしれない。


「屋根は甘いですけど、貴方は苦いです。聞きたいことは山ほどあるけれど、僕たち初対面ですよね。何だか知った風な口ぶりでしたから、流れで合わせましたけれど、いつまでも貴方の手のひらで踊ってあげるわけにもいきません。改めて自己紹介から始めませんか」


虚勢を張る。弱みを見せてはならないと思った。彼女がほぼ一方的にポロリ、パラリ、ペロリと語っていたけれど、何様だと思うに他ならなかった。堂々と領地に侵入してくるようなものだ。


「”この状況をどういう風に見る”かどうかは大切でも重要でもないよ。私の価値観を押し付けるつもりはないけれど、順じてくれた方が身のためになる、と私は主張してあげる。さすがに決定権まで奪おうとはしない。というかそんなこと、”不可能”だもの」


後に続いて、”この世界ではね”とでも言いたいのだろうか。しかし、会話はそこで区切られてしまった。自主的にではなく、強制的に。まるで言葉も出ない状況とは、こういうことを言うのだろう。地面が屋根が崩れ落ちたのだ。前触れ、余興、いま思い返してみればあったが、その時点で気づくほど注意に意識が向いていなかった。目の前に他人がいるんだ。それに会話もしている。彼女以外に目がいくのは失礼だろう。そう言い訳をした。

何でも知ってるつもりでも本当は知らないことがたくさんある、彼女も僕も、ちっぽけな存在だ。ちっぽけなりにもがき抵抗するのが人間なのかもしれない。人間、人間、人間、ゲシュタルト崩壊と共におかしな生命である。



終わりました。まだ先があってもおかしくないのに、終了です。今後の展開があるとしたら、私の頭の中だけなんですけれど、継続して書いてみるかは僕次第である。読者がどのような小説を好むか、よくわからないため、いわばお試し投稿と言った感じでしょうか。もしも、感想が一寸でもあれば、続きをお見せ致しましょう。

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