戦略的に……
巨大なカニは昭人達に向かって、そのハサミを振り下ろす。
逃げの体勢に入っていた二人と一匹は、なんなくかわすが彼等の居た床(元天井)に大きな穴を作る。
「こんなのとまともに戦ってたら、体が持たない。電撃食らわしてやれ」
「了解っと。」
ゴールデンクラブに雷の塊が吸い込まれる。
「Oh! チャージしてくれるのdeathか? しかし、知らない人から物を貰ってはイケないと教えられて育ったので、これはこれはお返ししてあげますdeathよ〜」
と言うと、そのハサミの内側から、人に向けてはイケない放電が始まる。バチバチと
「なんで効かないのよ。もう一発……」
「ちょっストップ! 吸収してやがる。電撃耐性掛けてくれ」
突然の戦闘に戸惑いつつも、昭人は振り下ろされたハサミを鉈で切り付ける。が、硬質な音が響くのみで溝を刻む事すら叶わなかった。
「やっぱり無理か。バッテリーは……デカすぎるだろ」
腹部に取り付けられたそれは、その巨体に比例したサイズで取り外すのも苦労しそうだ。
「ほらほら。ちゃんと避けないとぺっちゃんこのぐっちゃんこになっちゃうyo~」
ゴールデンクラブの動きは単調で、構造的に相応しくない直立2足歩行をし、脚を止めてから左右のハサミを振り回す。と、威力を除けば滑稽な攻撃しかしてこない。
昭人の後方からソフィアの声と共に氷の塊が飛び、着弾したハサミの根本が凍りつき、動きを止める。
「shit!! おいたが過ぎると、本気になっちゃいますよ」
時間稼ぎにしかならないであろうが、ゴールデンクラブは挟まった氷を砕くのに動きが止まる。
「カニの癖に生意気なんだよ!!」
昭人は与えられたわずかな時間を有効利用すべく、ハサミの内側。白い腹に潜り込むと、バッテリーと繋がるコードに鉈を振り降ろす。振り降ろす。振り降ろす。
何度も繰り返された斬撃により現れた地金に、黄色のオーラを纏った昭人が突き刺す。
「霊長類なめんなっ!!」
「がっ 我がマリ、マリーゴールド号は永遠に……ふっ不滅~~~!!」
全身から煙をあげるゴールデンクラブ・ショウには狙う余力も無く、2本のハサミを壁に突き立てて動きを止めた。
「昭人って以外と強かったのね。見直したわ」
「いや、運が良かっただけだ。鉈も溶けちまったし、帰ったら装備整えて基礎から習わないと駄目だな」
「じゃぁ装備代を賄う為にも、お楽しみの収集タイム始めまちゃいましょう」
「力不足ではありますが、わたくし目一杯運ばせていただきますよ」
「……ザリガニ。お前隠れてただろ」
「まっまさか! お二人が死闘を繰り広げてる中、そんな卑怯な生き方する訳が。お二人の事を思えばこそ、思えばこその戦略的避難を。 何か変な音しませんか?」
「何でも戦略的を付ければ許される訳ないだろ! サーカス辺りに売っぱらってやる!!」
「ストップストップ。確かに何か聞こえるわ」
室内を反響する微かな音は、徐々に大きくなり二人と一匹が原因を突き止めた時には室内に明らかな異変を生じさせている。
ゴールデンクラブが突き立てたハサミの間からこぼれ落ちるソレは、当初の『……サラ……』から既に『ザーー』と言う音に変化していた。
「ソフィアは、ここがどこだか覚えているか?」
「……記憶喪失になった覚えは無いわね。残念ながら」
「どうすべきだと思う?」
「わたくしが思うに、こんな時こそ『戦略的』に物事を考えるべきかと」
圧力に負け、ついに抜け落ちるハサミ。砂の進入速度が跳ね上がり、更には周囲の壁をも削り、もはや濁流となって室内に流れ込んでくる。
「「「~~~~っ戦略的撤退!!」」」
ようやくスランプ脱出?書けるようになってきました^^v
プロット臭いですが、いつか修正しますw