騒々しい彼ら
一台のソリに積みきれないだけの荷物を舟に移すため、地上まで戻ってきた二人。
すると、スタッフルームの最奥に置かれていたザリガニ型の機械(以降ザリガニ)が突然起動しだす。
どうやら太陽光で動くらしく、起動時に目の前に居た二人を所有者認定してしまった。
「わたくし大抵の事なら出来てしまいますです。ハサミ部分のパーツを付け変えれば、掃き掃除は勿論の事、高所の枝伐りも勿論。腹部の脚で濡れ拭きから拭き、ワックス掛けが一度に行える多機能振り。今ならなんと、無料で付いて来ちゃいますですよ。ですから売るなんて仰らず、末永いお付き合いをば」
「俺は宿住まいだから掃除ってもなぁ」
「いっいえいえわたくしの実力はそんな物では・・・えっと、世界各地の言語、地理、動物情報を網羅しております」
「古い情報なんてより必要ないだろ。他のは再起動しないみたいだし、やっぱ売って」
ザリガニは、突然の身売りを回避するべく自らをPRしていくが、お金を得る為に今回のクエストを買った昭人としては、高値で売却以外の選択肢がなかったのだがソフィアがその言葉を遮る。
「昭人はちょっと黙ってて。ねぇ、動物情報ってどんな事を知ってるの?」
「おぉお嬢様はお目が高い。動物図鑑機能はもちろんの事、撮影スタッフが述べ半年にも渡り生態形を追った作品などはシリーズを通してお子様から絶大な人気がございます」
ザリガニからの返答に、ソフィアの眼が光輝く。
「昭人、売るのはやめよ。古代生物の情報なんて行く所に行けば、それだけで一財産になるわ」
「情報を売るって言ったって、そんな『行く所』なんてピンポイントな情報を売るあてはあるのか?」
「言語、地理は知り合いには居ないけど、生物学なら一人居るわ。それも動物バカで有名な伯爵様で、唸るほどお金持ってる人物が」
この一言で昭人も折れる事になった。かなり遠方にいる人物なようで目先のお金にはならないが、幸い今引き上げた荷物だけでも借金返済には余るだけの利益が見込めている。
「もうちょっとだけ頑張ってくれよ」
そういって昭人に名前を呼ばれたライマールは、触手を伸ばして彼の手に載せられた干し魚を掴む。
同行者が1匹増えたが、再び地下に潜る道中、同行者はマッコウクジラVS大王イカの話を延々と続けている。
「鯨と言うのはですね。おぉ お嬢様ご存知でしたか。この鯨が主食としているのが、大王イカでして。こちらはお嬢様もご存知ないと。では僭越ながら説明をば。
ダイオウイカ科ダイオウイカ属ダイオウイカ は、体長は20m、2本の腕と8本の脚を触手の様に自在に操る。まさに『king of 化け物』と呼ぶに相応しい生物でして、そんな化け物を鯨が捕食する貴重映像がなんと! わたくしに保管されております。大迫力の映像を是非ごらんになって頂き・・・
はい。このソリを曳く事をご所望と。ちなみにわたくしは『ptーABー001』と申しまして・・・はい。ザリガニとお気軽に呼んで下さればいつ何時でも馳せ参じ・・・はい。わたくしはなんと言っても口が堅いのが一番の自慢でして、喋るなと言われれば100年に亘って沈黙する事が・・・すいません、静かにします」
「ここまでは全滅させているはずだが、どんな敵が出るのかわからないんだから、本当に頼むぞ」
「そんなにきつく言わなくても良いでしょ。売る為には情報を聞いて、書き興さないといけないんだから。そういえばここにずっと居たんだから、この先はどうなってるか知ってるんじゃない?」
「転覆してしまっているようですが、この先はマリーゴールド号が世界に誇るエントランスとなっておりまして、華美でありながらシックな室内は、乗客を夢の世界に誘う」
「エントランスだとお金はあまり期待出来ないかしらね。シャンデリアぐらいなら残っているかしら」
「だからお前はなんで大物ばかり選ぶんだ。で、運ぶのはお前だからザリガニも言ってやった方がいいぞ」
「ちなみに名前はそれで決定なのでしょうか。わたくしどちらかというとロブスターをモチーフに作られたのですが」
「船の探索の定番だと船長室に一番のお宝があるんだが、一等客室より貴重品を船長が持ってるのかね」
華麗なスルーを決められたザリガニがそこには1匹おりました。合掌・・・
「ここはエントランスってよりカジノか?」
目的のエントランスルームに入った昭人の感想通り、仰ぎ観る昭人の頭上には波で揺れない様にと、イカサマ防止にすべての家具が固定されていて、ポーカー台やスロットマシンが並んでいる。
そして部屋の中央には人二人が縦に並べる程の巨体にシルクハット、体の中央にはカールした鼻ヒゲが付いているデフォルメされたカニが鎮座している。
「・・・ねぇ、この部屋には大した物はなさそうだし、引き返しましょうか」
「気が合うな。賭け事には関わるなってのが、爺さんの遺言だったんだ。とっとと町に帰って祝杯あげようぜ」
「カジノを楽しめないのは人生の半分を棒に振っている様な物でございます。是非お二方にもって引っ張らないで下さい。モゲちゃいます~~」
少し先の未来を予感した二人は愚図る一匹を引きカジノルームを出ようと向きを変えるのと、スポットライトを存分に浴びたソイツが喋り始めたのは同時だった。
「全国一兆五千億人から選ばれました、レディアンド紳士淑女の皆様マリーゴールド号にようこそ。私、当船のマスコットであるゴールデンクラブ・ショウが皆様を快適な・・・おっと無銭乗船者がこの中に紛れ込んでいますね~
これはけしからん!! お金を落として戴、失礼。適正価格を乱す犯罪者には適正な罰という物を体に叩き込んで差し上げまShowTime」
宣言と共に、何年も動くことの無かったであろう音響設備からハイテンポの曲が室内に響きわたった。
考え始めると書けなくなってしまうので小説よ言うよりプロットですが、とりあず投稿。
この戦闘が終わったら、一区切り付くまで書き貯めをした後に投稿します。