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ホテルマン異世界転生_ようこそ、終焉の宿へ ~ブラック企業のナイトオーディターは異世界で"ウォーキング"を極める~  作者: もしものべりすと


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第二十九話 従業員を守る

避難民の受け入れを続けていた、ある日のこと。


宿に、予期せぬ客が訪れた。


「冒険者ギルドからの依頼だ」


それは、武装した一団だった。全員が、殺気立った目をしている。


「避難民の中に、虚無帝国の間者がいるという情報がある。引き渡してもらおう」


「間者……」


遼太郎は、眉をひそめた。


「そのような者が、うちにいるという証拠はあるのですか」


「証拠? そんなものは必要ない。疑わしい者は、全員連行する」


「疑わしい者……」


「避難民の中から、虚無帝国出身の者を、全員引き渡せ」


遼太郎の顔が、険しくなった。


「お断りします」


「なに……?」


「この宿にいる人々は、私の客です。正当な理由なく、引き渡すことはできません」


一団のリーダーが、一歩近づいた。


「貴様、何を言っている。戦時下だぞ。敵国の者を匿えば、反逆罪に問われることもある」


「反逆罪だろうが、何だろうが構いません」


遼太郎は、一歩も引かなかった。


「この宿の中では、争いは禁止です。それが、宿屋の掟です」


「掟だと……?」


「この宿は、聖域です。宿の中にいる限り、誰もが安全でなければなりません」


遼太郎の目が、真っ直ぐにリーダーを見つめた。


「お帰りください」


リーダーの顔が、怒りで赤くなった。


「貴様……!」


彼は、剣に手をかけた。


その瞬間。


宿の周囲が、淡い光に包まれた。


「な、なんだ……!?」


一団が、驚いて周囲を見回す。


「これは……」


遼太郎も、驚いていた。


宿全体が、青白い光に包まれている。まるで、結界が発動したかのように。


【通知】


・宿主の意志により、聖域結界が発動しました。

・結界内での暴力行為は、無効化されます。


遼太郎は、視界に浮かぶ文字を見た。


「聖域結界……」


星核の力が、発動したのだ。


彼の意志に呼応して、宿を守る結界が張られた。


「くそ……何が起きている……!」


リーダーは、剣を抜こうとしたが、手が動かない。


「暴力行為は、無効化される、か……」


遼太郎は、状況を理解した。


「お帰りください」


彼は、再び言った。


「この結界の中では、誰も傷つけることはできません。力ずくで連れ出すことも、できません」


「くっ……覚えていろ……!」


リーダーは、悔しそうに叫んだ。


「お前は、反逆者だ! 必ず、報いを受けることになる!」


一団は、去っていった。


結界の光が、ゆっくりと消えた。


遼太郎は、深い息を吐いた。


「危なかった……」


「リョウ様……」


スタッフたちが、駆け寄ってきた。


「大丈夫ですか……」


「ああ、大丈夫だ」


遼太郎は、彼らを見回した。


「皆さんも、無事でよかった」


「でも、あの人たちは……」


「また来るかもしれない。でも、この結界がある限り、宿の中は安全だ」


「結界……あれは、何だったのですか」


「この宿の、守りの力だ」


遼太郎は説明した。


「星降り亭から受け継いだ力。宿主の意志で、宿全体を守る結界を張ることができる」


「すごい……」


「でも、無敵ではない。結界を維持するには、力が必要だ。そして、結界の外では、何もできない」


遼太郎の表情が、引き締まった。


「これからも、注意が必要だ。外に出る時は、気をつけてくれ」


「はい……」


スタッフたちは、頷いた。


その夜。


遼太郎は、セレスティアに報告した。


「冒険者ギルドから、間者を引き渡せと言われました」


「聞いたわ。あなたが、断ったって」


「当然です。根拠もなく、避難民を連行させるわけにはいきません」


「でも、危険よ。ギルドを敵に回したら……」


「分かっています。でも、それでも、やらなければならないことがあります」


遼太郎は、窓の外を見た。


「この宿にいる人々は、私の客です。彼らを守るのが、私の責任です」


「責任……」


「宿屋の主人として、私は全ての客に安全を提供する義務があります。たとえ、それが危険を伴っても」


セレスティアは、遼太郎の横顔を見つめた。


「あなた、本当にすごいわね」


「すごくはありません。当然のことをしているだけです」


「それが、すごいのよ」


セレスティアは、遼太郎の手を握った。


「私も、あなたを守るわ。何があっても」


「セレスさん……」


「一緒に戦いましょう。最後まで」


遼太郎は、セレスティアの手を握り返した。


「ああ。一緒に戦おう」


二人は、静かに誓いを交わした。


翌日。


宿には、さらに多くの避難民が押し寄せた。


前線での戦闘が激化し、逃げてくる人々が増えているのだ。


「もう、入りきらない……」


リリアが、疲れた顔で言った。


「でも、断れない……」


遼太郎は、考えた。


そして、一つの決断を下した。


「星降り亭に、連絡を取りましょう」


「星降り亭に……?」


「向こうにも、避難民を受け入れてもらいます。王都だけでは、限界がある」


「でも、あちらも大変なのでは……」


「分かっています。でも、ゴブ爺さんなら、きっと受け入れてくれる」


遼太郎は、すぐに手紙を書いた。


そして、使者を送った。


数日後、返事が届いた。


リョウ様へ


避難民の受け入れ、喜んでお引き受けいたします。


星降り亭は、結界強度が90%まで回復しております。多くの人々を、安全に受け入れることができます。


王都から、こちらへの移動手段を、手配いたしましょう。


どうか、お体に気をつけて。


ゴブ爺より


「さすが、ゴブ爺さんだ……」


遼太郎は、安堵のため息をついた。


「これで、もう少し多くの人を、助けられる」


星降り亭との連携が始まった。


王都から辺境へ、避難民を送り出す体制が整った。


「一人でも多くの人を、救おう」


遼太郎は、改めて決意した。


戦争は、まだ続いている。


しかし、彼にできることは、目の前の人を助けること。


それを、一つ一つ、積み重ねていく。


それが、彼の戦い方だった。

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