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お姉様の婚約者がクズだったので、破滅させようと思います

作者:
掲載日:2025/10/07

お姉さまは、ずっと私の憧れだった。


 あのプラチナブロンドの髪! クリスタルのような瞳!


 あぁ、お姉様は今日も美しい。


 しかもしかも! 大事なクマのぬいぐるみもクロエにくださった、とっても優しいお姉様!


 でも何故か、みんなお姉様の良さをわかってない。


「クロエは本当に可愛いわ。いつか王妃様になれるわよ」

 母は私にばかり構ってきた。

 

「ごめんね、リラ。僕はクロエが好きなんだ」

 お姉様の婚約者は皆、そう言って私に擦り寄ってきた。


「お姉様はずーっと1人ね。だから、クロエが一緒にいてあげる!」


 あの時の約束を、お姉様は覚えているだろうか?


 だからね、お姉様。お姉様に近づく男は、みんなクロエが破滅させてあげる。


 そうすれば、クロエたち、ずーっと一緒だもんね!


    *        *


「ねぇクロエ。僕は君が好きなんだ」


「えっ?」

 

 お姉様の婚約者である第三王子。お姉様がいうに『優しくて誠実』らしいその王子は、クロエの手をそっと握ってきた。


「でも、アーサー様はお姉様の婚約者でしょ?」


「リラは……僕がいなくても大丈夫だから。クロエと違って強い子だし。だけどクロエはちっちゃくて、危なかしくて。だから僕がいてあげないと」


 ニヤニヤ笑うその顔に、なんだかとっても腹が立つ。

 クロエはその時ふと思った。もしかしてクロエ以外の女の子にも、同じようなことを言っているんじゃないかしら?


「ねえ、アーサー様。クロエもアーサー様が気になります。でもアーサー様、他の女の子とも仲良くしてますよね? クロエ、ちょっとヤキモチ妬いちゃいます」


「えっ……いや、それはさ。ただ遊んでるだけなんだ。僕の本命はクロエだよ」


 焦った様子で言い訳するアーサー様。


 ふぅん、やっぱり図星なんだ。


「じゃあ、クロエはそれを信じます。だから……アーサー様のこと、クロエにもっと教えてください」


 にこりと甘い笑みを浮かべると、アーサー様はでれでれと鼻の下を伸ばす。


 正直とっても気持ち悪い。でもこれもお姉様のため。クロエはお姉様のためならば、この程度の吐き気我慢します。


 クロエはアーサー様に誘われるまま、彼の部屋へと吸い込まれていった。


      *       *


「うーん、完全に黒! アウト!」


 部屋に入った瞬間から、もうすでに結果は見えていた。女物の香水の匂い、少女趣味な貰い物と思しき小物。


 極め付けはアーサー様の部屋から出てきたアクセサリーの数々。王宮内で広まってる噂。どう考えても3人以上は他に親しい女がいる。


 クロエは証拠を前にして、自分の部屋でうんうん唸る。


 さて、どうしたものだろう。


 その時クロエは閃いた。どうせ3人もいるんなら、バトルさせたら楽しいんじゃない?


 クロエはにっこり微笑んで、彼女達3人に、それぞれ手紙をしたためた。


       *       *

 

「ねぇ、婚約破棄してあたしと結婚してくれるって言ったじゃない!」

「アーサー様……私を、弄んでいらっしゃったのですか……?」

「最初は私と付き合ってたんです! なのに、なんでこんなに増えてるんですかぁ!?」


 ぎゃいぎゃいわいわいとうるさい女性達の声。間に挟まれたアーサー様は真っ青になって震えている。


 クロエの隣にいるのは、それを見てしくしくと泣いているお姉様。


 クロエはその場にしゃがみ込み、そっとお姉様の手を取った。


「あぁ、可哀想なお姉様。こんなにお目目を赤くして。お姉様、ひとりぼっちになっちゃったね」


 お姉様はうるんだ瞳を見開いて、クロエの方をじっと見る。キラキラと輝くそれは、まるで宝石のようだった。


「なんで……?」


 ポツリと呟くお姉様。


 なんで、なんで……かぁ?


「だって、もったいないでしょ?」


 あんなクズに、お姉様をあげるなんて勿体無い。あいつに、そんな価値などありはしない。


 お姉様はぐっと唇を噛み締めてから、うつむいて一言も発さない。ただただ、静かに泣くばかり。


 あぁ、可哀想なお姉様。ひとりぼっちのお姉様。


 でも大丈夫、クロエはずーっとそばにいるからね。


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