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とある、友人と呼べるか怪しい知人から大きめの届けものが来た。

知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品を載せていこうかなと思っています。

お題は「とある、友人と呼べるか怪しい知人から大きめの届けものが来た」です。

楽しんでいただけると幸いです。

とある、友人と呼べるか怪しい知人から大きめの届けものが来た。

長方形の幅の細いダンボールで梱包されたそれは、両腕で抱えられるがやたら重く、普段力仕事とは無縁の私には玄関から部屋の中へ運ぶだけでも重労働であった。

やっとの思いで部屋へ運び入れ、改めて送り主と宛名を確認する。

送り主はK氏。宛名は私の名前が記載されている。

K氏とは、海辺の療養先で出会った特異な人物である。

というのも、わたしは持病を患い、生家から離れた海辺の見える療養所で治療に励んでいた。

K氏はその療養所の近辺に住んでいる学生であるらしい。

らしいというのは、彼の外見からそのように判別を下した程度なので、実際は違うのかもしれない。

K氏とは夜の海辺を散歩している時に出会った。

波音を聴きながら浜辺に表出している岩の一つに腰かけ、夜の水平線を眺めていた私の視界にK氏が飛び込んできた。

K氏は私に背を向け、波打ち際の辺りに立っていた。何をするでもなくそこにぽつねんと突っ立っていた。

何をしているのだろう?

月明かりが乏しい中、彼は波を執拗に眺めている。

何をそんなに熱心に見ているのだろう。

私は彼を驚かせないように務めて足音を立て、咳払いをしながら彼に近づいた。

「何を見ているのですか?」

しかし、話しかけたと言うのに、彼はぴくりとも動かなかった。

斜め後ろまで来たところで、彼は初めて私の存在に気がついた。

「やぁ、こんばんわ。良い影の日ですね」

彼は私を見つけてそう言ったのだ。

「良い影の日?」

オウム返しで尋ねた私に彼は破顔した。

「今夜は月明かりが乏しいので影が闇との境界線に消えてしまいそうなんです。良き影が生まれるような予感がするので、良い影の日、と」

このように、K氏は影に異様な執着を抱く人間であった。

満月の日も、三日月の日も、彼は波打ち際で月明かりに出来る自分の影を眺めていた。

彼は影を何か面白い遊び相手のように思っていたのだろう。

波で歪む自分の影、光の当たり方で伸びる影を眺めては微笑んでいる。

そんな摩訶不思議な価値観を持つ彼から私の療養所へ私宛の荷物。

一体なんだと言うのか。

療養所の職員からカッターを借り、慎重に梱包を開封していく。

中に入っていたのは頭から足先まで映る鏡、葉書であった。

慎重に鏡を壁に立てかけ、葉書をなんとはなしに眺める。

そこにはこのように綴られていた。

「S氏(わたしの名前だ)へ。貴方は私の影への飽くなき探求を認めてくれた唯一の方です。ですから、貴方に欲しがっていた鏡を送ります。この鏡で貴方の目指すべく境地への道が成就されますよう」

K氏は全くの善意から鏡を送ったようだ。

私が鏡を求めていたのは事実だ。だが、K氏にはそこにもうひとつの事実は述べていない。

「私が水仙(ナルキッソス)の狂人という、自分の顔に病的に執着し、他の生活がままならない奇病だと知ったら、こんなことしなかっただろうね」

この鏡は職員に見つからないように隠せる細工が施されている。

職員に見つかれば取り上げられてしまうことも言っていたから、これは特注で作らせたのだろう。

立てかけた鏡の中で、頬を染めた私ではない、いとしいひとが美しく微笑んでいた。


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