「月が綺麗だと思わないかい?」
知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。
ショートショートです。
楽しんでいただけると幸いです。
「月が綺麗だと思わないかい?」
ベッドに横たわる私に背を向け、彼は言った。
開け放たれた窓から夜風が入ってきて、私の前髪を揺らしていく。
「ある文豪は外つ国の愛しているを月が綺麗ですねと訳したらしいね」
優美に微笑み私を振り返る彼。私が横たわるベッドの下には赤ワインが割れたカップと共に転がっている。
彼はそれを踏まないように私にそっと近づいて、囁いた。
「あと数分もしたら君は死ぬ」
そう。私は、彼に毒を盛られた。
彼と私は仮の恋人関係だった。だが、その曖昧な関係に終止符を打つべく、今夜ホテルの一室に彼を招き、結論を急ごうとする私にワインを飲ませ、私はまんまとそれにかかってしまった。
体が言うことを聞かない。手足の先から痺れて動かなくなっていく。ドクドクと跳ねる心臓が命が終わる一歩手前だということを知らせているようだった。
青ざめ、冷たくなっていく私に、彼は続けて囁いた。
「君が僕から離れていくなら、僕は君を殺して繋ぎ止める」
「君を愛するのは僕だけでいい。君の心を占めるのも僕だけでいい。そして、君の命を終わらせるのも…あわよくば僕でありたい」
「君が死んだら僕も後を追うよ。君のいない世界で生きるなんて退屈すぎるもの」
「おやすみ、My sweet.好きだったよ」
その言葉を最後に私の意識は完全に途絶えた。




