「花の香りが届いた」
知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。
ショートショートです。
楽しんでいただけると幸いです。
視界を閉ざした私の世界は音と匂いと気配だけで構成されている。
私は数ヶ月前に大きな衝突事故に巻き込まれた。幸い一命は取り留めたが、目が見えなくなった。
そして、全身の骨にひびが入っているらしく無理に体を動かせない。
日がな一日ベッドで過ごす私の元に、両親や友人たちが見舞いにやって来る。
だが喋ることもままならない私に、徐々に見舞いに来てくれる人の気配は減っていった。
そんな日常を送っていたある日、花の香りがするようになった。
看護師さんが入ってきてベッドのサイドテーブルへ花を届けてくれるのだ。
送り主は友人のさとうちゃんだった。
状態の悪い私を元気づけたくて、せめて話せないなら花を送ろうと決めてくれたらしい。
誰かの気持ちが籠っているのはとても嬉しかった。
私は今日も届けられた花の香りを楽しみ、口の端に小さな笑みを浮かべた。
「さとうちゃんって…この前病室で亡くなった子よね?その子の名義でお花が届けられてるの?」
「そうみたいなの…。さとうちゃんの親族にもお話を伺ったんだけど、お花を届けていないって…」
「気味が悪いわね…。誰がこんないたずらしてるのかしら…」
「でも、患者さんにはこんなこと言えないし…お花を飾ると、あの子すごく嬉しそうにしてるから…」
「…患者さんが回復してから本当のことをいいましょうか」
「そうしましょう」




