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「嫌な音が聞こえた」

知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。

ショートショートです。

楽しんでいただけると幸いです。

嫌な音が聞こえた。

弦の切れる音だ。これじゃあ楽器を爪弾けない。

嫌な音が聞こえた。

風を切り裂く矢の音だ。頬を掠めて家屋の壁に突き刺さった。

嫌な音が聞こえた。

人々の悲鳴、荒々しく大地を踏みしめる音だ。

嫌な音が聞こえた。

火の爆ぜる音。剣戟の音。重々しい、命の消え去る音。…戦火の音だ。

国境の砦を超えて、隣国の兵が街になだれ込んできた。

街に駐屯する兵は敵兵に向かっていき、民衆はみな持てるだけの荷物を持って街から逃げ出した。

逃げ惑う人々を襲う敵兵。悲鳴と荒々しい足音が交差して、街はすっかり赤い海に包まれた。

弦が切れるのは不吉の前触れ。吟遊詩人である母はかつてそう言った。

演奏の途中で弦が切れて、間髪入れずに敵兵が街に入り込んでくるとは思っていたなかったが。

ここにいれば私も巻き込まれる。

弦の切れた母の形見を布で包み、私も駆け出した。

さて、今回はどこまでやり遂げられるか。

煙でぼやけた視界の中で、人の足音と人が生み出す風のうねりを頼りに私はがむしゃらに走りだした。冷や汗と共に口元に微かに笑みが浮かんだ。

様々な戦の物語を語り継ぐ吟遊詩人であった母の跡を継いだ。

人々に戦の無情さ、残酷さ、そして勝戦国が自分勝手に作り上げる英雄の物語を歌い聞かせるのが私の役目だ。

戦を経験するのは三度目。開戦の気配漂う国境の街へ赴き、人々に戦の詩を歌い聞かせた。この詩で多くの人に逃げるよう促せただろう、そう信じたい。

そして、この街への襲撃も語り継ぐためにも私は逃げなければいけない。

逃げたあと、この街への襲撃は誰が先導したのか。どうやって屈強な兵がそろう砦を突破したのか。情報を集めねばいけない。そして歌い継ぐ。

楽器をぎゅっと胸に抱え直し、私は街から逃げ出した。

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