「今日は〇〇記念日」
知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。
ショートショートです。
楽しんでいただけると幸いです。
今日は彼との初デート記念日だ。
手帳に記したその内容に私は口元に微かな笑みを浮かべた。
大学のサークルが同じで、徐々に仲良くなり、二年の時に付き合いだした。
大学を卒業して社会人になってからも付き合いは続き、気づけば六年間交際をしていた。
周りから結婚しないのか?とからかわれたりせっつかれたりも多々あった。けれど、私達はまだその時期じゃない、とその選択を先延ばしにしていた。
その選択が良かったのか、悪かったのか、今の私にはよく分からない。
今日は彼との初デート記念日。そして、約束を果たしている報告をしに行く日。
家を出て、車を走らせること一時間。途中で花屋によってミニひまわりを買って、彼の元へ急いだ。
「久しぶり、きたよ」
私は山間にある小さなお寺が管理している霊園へ来ていた。
彼の眠る墓標へ花をお供えして、お線香を上げて手を合わせる。
彼は、一年前にこの世を旅立った。酷い交通事故に巻き込まれ、病院に運び込まれたが助からなかった。
一人この世界に残された私は、律儀に彼との約束を守っている。
「僕以外を好きにならないで」
これが、滅多にワガママを言わなかった彼の、最後の願いだった。
両親も周囲の友達にもこのことは話していない。
私の中だけで完結している約束だった。
私はこの先、彼以外を好きにならない。約束を守り続けて一人きりの生涯を送るだろう。
それでいい。何十回、何百回と自問自答してたどり着いた答えだから。
今日は彼との初デート記念日で、約束の報告をしに行く日。
私の心は貴方に寄せて、他を入れないよう、そっと凍らせて。




