あなたはわたしの蜘蛛の糸。でもわたしの首を締めている
こちらはわたしが適当に思いついた文章の羅列(題名)にストーリーを付けたらこんな感じかな、という作品になっています。
楽しんで貰えたら幸いです。
リョウくんは皆の王子様だった。
大学の同級生で、売れっ子の俳優さんで、誰に対しても分け隔てなく優しくて…。
そんな彼が隅でじっと座っているような私に声を掛けてきたのは想定外だった。
「教科書忘れちゃってさ、見せてもらえる?」
その申し出を断れるわけもなく、私は緊張ぎみに彼に教科書を見せた。
その日を境に、徐々に彼との距離は近くなっていった。
リョウくんは優しくて、親切で、私が困っていると助けてくれた。
大学で友達もろくに居なかった私の日常がリョウくんで染まるのは時間の問題だった。
大学の王子様を独占しているって大勢の女子から目の敵にされたり、いじわるされたりされても、リョウくんがいるから私はやってこれた。
そう、全部…彼が私の側に「友達」としていてくれたから。
「君のことが好きなんだ、付き合って欲しい」
ある日の授業終わり、あまり話したことの無い男子に声をかけられ人のいない空き教室で告白された。
真面目な顔をして言われた、人生で初めて受けた告白。
でも私は誰かと恋人関係になる気はなかったので丁重に断った。
「…リョウくんの方がいいわけ?」
低く怒気を孕んだ声がした。告白してきた男子が不機嫌そうな顔をして見下ろしている。
「あんな人たらしのどこがいいんだよ!君がいじめに合ってるのに、あいつは助けるどころか知らん顔してるだろ!」
なんと、私のいじめの件まで知っていたとは。驚き固まる私に告白してきた男子は言い募る。
「俺の方が君を大事にできる!彼女を放っておいて他の女に媚び売るようなやつと付き合う義理なんてないだろ!?」
付き合う…?誰と誰が?…リョウくんと私が?
有り得ない。私は彼の「友達」だ。それ以上でも以下でもない。
いつも近くにいるからあらぬ誤解をかけられているのは薄々気づいていたが、正面から言われるとなんと訂正していいのか分からなくなってくる。
結局、男子からの告白をうまく断ることができず、私は告白してきた男子と付き合うことになった。
付き合ったからと言って私の日常が大きく変わることはなかった。
相変わらず私の側にはリョウくんがいたし、いじめは続いていた。
変わったことと言えば、彼氏といる時間が増えたことだろうか。リョウくんと私のいるところに彼氏がやってきて、私をリョウくんのいない別の場所に連れ出すのだ。リョウくんは笑顔で見送ってくれたし、私も抵抗せず彼氏と過ごす時間を許容していた。そして、彼氏は私のいじめを防いでくれる。いじめの被害が少し減っただけでも私としては万々歳だった。
けれど、彼氏と付き合って一週間後、彼氏から別れを告げられた。
理由は教えて貰えなかった。私自身彼氏にそこまで執着していなかったから、別れ話は円満に済んだ。
けれど、別れ話中…彼氏だった人の顔色が酷かったのは気にかかった。
何かあったのだろうか?と問いかけた方が、結局疑問を尋ねることは出来なかった。
「彼氏と別れたんだって?」
別れて数日経った頃、リョウくんからそう尋ねられた。
そうだよ、と頷くとリョウくんは残念だったね、と眉を下げる。
「大丈夫、君を本気で好きになってくれる人がいつか現れるよ。だから悲観しないでね」
にっこりと微笑んでくれるリョウくんに私はそうだね、と返した。
リョウくんと「友達」でよかった。とひっそりと思ったのだった。
そう言えば、最近いじめがなくなったような気がする。私を目の敵にしていた女子も私を遠巻きにするようになった。どうしたのだろうか。
考えても分からない理由はそれ以上考えないことにして、私はリョウくんとのお喋りを楽しむことにした。
『彼氏なんて許すわけないじゃないか。恋人は作りたくないって君が言ったから「友達」のままでいたのに…。いじめだって少しづつ減らした。君を傷つける原因は排除した。マネージャーにも君のことを認めさせるように働きかけてる。それなのに…何処の馬の骨かわからない奴に掠め取られるなんて冗談じゃない。
君は僕のものだ。だれかになんて、絶対渡さないから』




