今日は理科室で待ち合わせ。
知り合いから一文のお題から想像して続きを書いてくれ、という物で書かせて頂いた作品です。
一文のお題は「今日は理科室で待ち合わせ」
ショートショートです。
楽しんでいただけると幸いです。
「探しにおいで。今日は小瓶の部屋で待っているよ」
放課後。夕日が差し、誰もいなくなった教室で、黒板の隅にそのように書かれていた。
どうやら呼ばれているらしい。なら行ってみようか、と私はスマホだけを持って教室を後にした。
小瓶の部屋、とはどこのことか。それはよくわからない。手当り次第教室を覗いていたのではキリがないし、まずは小瓶が置かれているような部屋の候補を上げていくことにした。
小瓶と聞くと、保健室に置いてある医薬品の瓶だろうか?
けれど、保健室は誰かしらいるだろうし、わざわざ相手がそんな場所を指定したとは考えにくい。
では、どこだろう?
廊下をゆっくり歩いていると、理科準備室が見えてきた。
そういえば、理科準備室にはフラスコやらビーカーやらが置いてある。
放課後の、部活動も終わったこの時間ならば、理科室にはほとんど誰もいないはず。
ならばここかもしれない。理科準備室はたまに教師が採点のために使用していることがあるので、私はその隣の理科室の扉を開けた。
予想通り、理科室の中は無人だった。
ならこの部屋のどこかに居るはずだ。私をここに呼び寄せた張本人が。
「ああ、いた。そんなところにいたのね」
理科室には誰がなんのために置いたのか分からないが、全身を映す姿見が壁に立てかけられている。
私はその姿見の前にたった。
「こんにちわ。お友達。今日は何して遊びたいの?」
鏡に映っているのは、私ではない、同じ歳で別の顔の女の子。鏡の中の友達。
友達はにこ、と笑って
「私、そっちに散歩に行きたいの。影を貸してくれる?」
「いいわよ。おいで、ドッペルゲンガー」
鏡の中の友達に手を差し出すとその友達は私の手を取り、鏡をすり抜け影の中へ入っていった。
「じゃあ、行きましょうか」
私は影を見て微笑んだ。影の中の友達も笑っている。
私達は足取り軽く、理科室を後にした。