「海行かん?」
知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。
お題は「海行かん?」
ショートショートです。
楽しんでいただけると幸いです。
「海行かん?」
エアコンの稼働音で一杯の部屋の中、腐れ縁の友人が独り言のように呟いた。
「いつ?」
「いまから」
「やだ、一人で行け」
「一人つまらん」
「じゃあ、俺以外を誘え」
「今日は平日。平日休みは俺とお前の二人」
「休日に他を誘え」
「今行く。今決めた。ほれ、準備しろ」
さっきまでソファを占領していた友人がしゃきっと立ち上がって外出の準備をしだした。
「いや、お前さ…うちで映画鑑賞しようって話だったじゃん。それはどうすんの?」
「レンタル映画なんていつでも見られる。行きたいって思った衝動のまま海に行くのは今この時しかない。てわけで行くぞ」
一度決めたらテコでも動かない友人が車のキーを持って外に行くぞと言う。
「あのね…ここから海行くのに三時間掛かるんだけど、そんなに長い時間車に揺られるの嫌だよ」
「大丈夫だ、高速使えば一時間半で着く」
「俺、運転しないからな」
「大丈夫だ、俺運転するから。よし、行くぞ」
こうして半ば強引に海に連れていかれることになった。
「そういや、なんで海に行きたいってなったんだ?」
「セミの声聞いてたら行きたくなった」
「なぜセミから海」
「セミ=夏=海。そういや今年海まだだ。よし、行くしかないと相成った」
「そうなのか…」
運転する友人は楽しそうに「海」に関連する歌をメドレーで歌っていく。随分機嫌がいいようだ。
俺はというと助手席でスマホ片手に今日見る予定だった映画を見ていた。
友人の宣言通り、海へは一時間半で着いた。だが、着いた途端どしゃぶりの雨に見舞われた。
「…帰んない?」
「…帰るか」
車に傘は積んでいるが、土砂降りの中外に出たいとは思わない。
この日はよく分からんドライブをして、当初の予定通り映画鑑賞会をすることになった。




