ウグイスの練習
知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品を載せていこうかなと思っています。
お題は「ウグイスの練習」です。
ショートストーリーです。
楽しんでいただけると幸いです。
『ほ、ほーーほけ!』
ああ、惜しい!もうちょっとだったのに!頑張れ!
夏目は自室の窓から聞こえてきたウグイスの声に心の中でエールを送った。
季節は三月。この時期、ウグイスたちの鳴き声の練習が始まる。
一生懸命「ほーほけきょ!」と鳴けるように練習する彼らを思うと、なんだか元気になれる気がした。
彼らがきちんと鳴けるようになるころには素敵なお嫁さんができていることだろう。
「そんでもって、わたしも素敵な彼氏が出来ないかなー。なんてね」
好きな人はいる。同じ大学で同じ授業を受けている男子だ。その人に、先月のヴァレンタインで手作りチョコを送った。
大学の彼が使っているロッカーにチョコを置いたまではいい。だが、チョコにメッセージカードを付けるのを忘れてしまった。前日の夜からうんうんと唸って書いたメッセージカードを自室で見つけた時は心臓の下の辺りが冷え、思わず絶叫してしまった。
彼とは同じ授業を受けているという以外に接点はない。ヴァレンタインをきっかけに親睦を深めようと思ったらこの始末…泣けてくる。
彼はチョコの送り主を探しているなんて話聞かないし、イケメンだしチョコは貰い慣れているんだろう恐らく。「チョコもらった、ラッキー」ぐらいにしか考えていないのかもしれない。
考えれば考えるほど落ち込む。そして、本日は三月十四日。ホワイトデー。
世の彼氏が彼女への贈り物で悩む日だ。だが、彼氏なんていないし、ヴァレンタインのお返しなど友チョコくらいしかないだろう夏目にはちょっぴり悲しい日でもあった。
ふぅ…とため息をついて時計を確認すると家を出る時間が近づいていた。
学生寮から大学まで徒歩で十五分程度。夏目はカバンを持って大学へ授業を受けに出かけた。
ゆっくり歩いて十五分。大学へ着くと、夏目はまっさきに自分に宛てがわれたロッカーへ向かった。
授業へ向かう前に春用のコートをロッカーに置かなければいけない。
コートを脱ぎ、ロッカーを開けて夏目は首を傾げることになった。
「あれ?なにこれ。プレゼント箱?」
そう。ロッカーの中に可愛くラッピングされた手のひらサイズの箱が置いてあったのだ。箱の下には白い封筒が置かれている。
友達でこんなことする人はいない。じゃあ、誰だろう?
コートをハンガーに吊るしてロッカーに収納し、夏目は箱と便箋を手に取った。封筒を開くと空色のメッセージカードが出てくる。
『ヴァレンタインのチョコ、美味しかった。これはほんのお礼です。PS.今度は直接渡してね。隼人より(夏目の好きな人の名前だ)』と記されていた。
息を止めて吐き出し、たっぷり深呼吸した夏目はプレゼント箱とメッセージカードを胸に大事に抱えて、教室へ走り出した。
彼も一緒の授業だ。きっと、教室の最後列にいる。
開け放たれた教室の出入り口を通り、好きな人の姿を見つけた夏目は、彼に向かって駆け出した。
この気持ちを今すぐ伝えたかった。




