表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/104

序章②

思えば、生まれて十五年、齢が十になった年から、タスクは仲間たちと戦闘訓練に明け暮れていた。火を操り、人間を滅ぼそうとしてくる種族、「ラヨル」の侵攻から自分たちの身を守り、また、自分たちを害なすラヨルの者たちを討つべく、日々闘い続けること。それが、タスクの世界のすべてだった。


 闇の中に、意識を持っていかれそうな感覚に陥る。目を瞑ってしまえば、そのまま永久に開けることはできないような気がした。タスクは、一層ぎゅっと歯を食いしばった。こめかみに圧がかかり、顎に疲れがたまる。脂汗が額から吹き出し、目に入りそうになる。このまま此処で息絶えてしまうのだろうかと、そんな考えが脳裏をよぎる。体が動かない以上、此処を脱出する術はない。それにこの負傷具合では、仮に歩けたとしても、崖を降りることは、叶わない。


(残り少ない最期の刻、か……)


 タスクは、去り際に、マユルが言い放った言葉を反芻していた。武器をとらず、己の身体のみで闘う以上、傷を負うのは避けられない。タスクの周りの大人たちも、一度戦闘に出れば、身体のどこかしらを負傷して帰ってくるのがザラだった。戦闘経験の浅い自分が、いきなりラヨルの長を前に、敵うはずがなかったのだ。むしろ死ぬ前に、その姿を目の当たりにし、対峙できただけでも運がよかったのかもしれない。




 それからしばらく経って、日が暮れた頃、タスクの意識はついに闇へと引きずり込まれていった。擦過傷はいずれも、深くはなかったが、ただひとつ、マユルの指が抉った傷口からの出血が止まらなかった。じわりじわりと身体から流れ出したそれは、やがてタスクの背中を濡らしていく血だまりとなっていった。むしろそんな状況において、日暮れまで、何時間も意識を保ったタスクの生命力が異常で、とうに事切れてもおかしくない出血量だった。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ