僕
素人がノリで適当に書いてみたものです。
読んでもらえると幸いです。
登場人物 長男.イトラ 次男.サイラ 三男.サトラ 母さん.ユズサ 父さん.ツユラ
「またここだ。」「ここはどこ?」「どこに向かっているんだろ」
僕は最近、夢を見る。暗い海の上を勝手に進む船に乗っている夢だ。
朝だ。今日も一日が始まる。何も変わらない一日。
まず、顔を洗う。次に、台所へ行き食パンをトースターに入れ、皿を出しておく。そして、フライパンで卵とウインナーを焼く。それらを出しておいた皿に盛り付け、晩ご飯の残りの野菜炒めを少し入れ朝ごはんの支度が終わる。
「おはようイトラ」「今日の朝なに?」「まだ眠ーい」
母さんと兄弟が降りて来た。揃ったら朝ごはんを食べる。その後、四人とも支度を済まし、それぞれ学校と職場に向かう。これが父さんが死んでから、一年でできた朝のルーティーンだ。
父さんは事故死だった。一年前、父さんが横断歩道を渡っていた時、居眠り運転で信号無視をしたトラックに轢かれた。それからはお葬式があったり、なんだかんだと忙しくしていたせいか、あまり実感が無かった。それでも『父さんの死』というのは、ショックが大きかったのか二週間ご飯が喉を通らなかった。しかしそれも徐々に回復していった。
回復してしばらくたった頃。「母さん仕事を増やそうと思うの。だから、家事を手伝って欲しいんだけど。いいかな?」と相談された。「いいよ。」元々掃除などの軽い家事は手伝っていたので母さんの負担を減らせるのならと思ってする事にした。
しかし、簡単ではなかった。掃除や、洗濯などは元からしていたため時間を調整すればすぐ出来た。一番はご飯だ。切るぐらいしかしたことが無かったため「うわっ、焦げたっ」「味うっすっっ!?」「?!今度はめっっっちゃ濃い…」と、失敗ばかりだった。だが、少しずつ母さんに教わり、一年がたった今は簡単な料理は作れるようになった。「よしっ!今日も朝ご飯できた!」
僕も高校に進学し、全て順調に進んでいた。そう思っていた。
僕が高校二年生に上がった頃、船に乗っている夢を見るようになった。その夢の頻度が段々多くなって、その上夢の中で船から落ちることも増えた。海に落ちると体が思うように動かず、ただひたすら沈んでく…「はぁっはぁっ・・・」息苦しくて起きる事が増えた。そのせいか、最近身体がずっと怠い。
土曜日
「イトラ、顔色が悪いわ。母さん今日仕事休みだからあなたは休みなさい。いつもありがとね。」
「ありがとう母さん。じゃあ今日はとことんダラけようかな」そうは言いつつ、寝る気も起きなかったので本を読む事にした。しかし、しばらくしても全然集中できなかった。そこで、学校から出されていた進路希望調査表を埋めようと向き合ってみた。「あああああ!」どうしたいかなんて分かんないよ。「夢もやりたい事も無いしなぁー」母さんに相談してみよ。
相談してみたけど、「そうね、得意なことから考えてみるのはどう?」って言われてもなぁ。今一番得意というか、出来るのは家事なんだよなぁ。家事も苦では無いし、今持ってるスキルを伸ばせるとこに行ってみるのも良いのかな・・・
「んぁっ」「あれっ?もう夕方?!いつの間に寝たんだろ?」ん?身体が少し軽いや。「母さんごめんめっちゃ寝てた」母さんがご飯を作っていた。「あら、おはよう。ゆっくり眠れたみたいね。顔色も良くなったね」そんなに酷く見えたんだろうか。
「兄貴!今日ね今日ねっ!」「兄さん、今日はねー」今日もこいつらは元気だな。「一人ずつ聴くからな〜」
ご飯を食べて、風呂の順番を待っていた。「イトラ、ちょっと良いかな?」なんだろ。「今まで本当に家事を手伝ってくれてありがと。」改まってどうしたんだ。「おかげで母さんいつも本当に助かった。」それなら良かった。「でもね、最近のあなた段々顔色も悪くなってて心配だったの。今日はフラフラもしてたから。母さんが休んでいる分の今までの疲れが出てきてるんじゃないかと思ったんだ。悩みでもある?」最近きついとは思ってたけどそんなにだったのか。「心配かけてごめん。さっき寝たのでめっちゃスッキリしたから大丈夫だよ。」「そう?なら良いんだけど。でも休みは大事だから、これからは母さんももっと家事するからね!」「母さんが平気ならそうしてもらおうかな。ありがと」
今日は、ゆっくり母さんと話せたな。なんかスッキリした気がする。夕方まで寝てたのにもう眠いや。今日は、早く寝て明日はちょっと外に行こうかな。
その日の夢はずいぶん綺麗だった。空が晴れて、海も穏やかになって気持ちの良い風が吹いてた。
「イトラ、君はもっと自由にして良いんだよ。今までお疲れ様。ありがとう」
懐かしい声がした。
世界が光って見えた。
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