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炎舞  作者: 百鬼繚
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タロットカード 〜Fool〜

震災でも無傷だった小さなビルがある、神戸の岡本に事務所を移して仕事を始める。最初の仕事はタロットカードを少年に渡す事だった。

震災から半年程して、復興まで時間がかかる為会社を神戸の岡本の方へと移転した。

命を守ってくれた棚は、元の父の友人だと言う家具職人が焼けた部分を削って、一回り小さな棚へと

リメイクしてくれた。その棚に燃え盛る火の中で出会った老人から受け取った銀色の箱を置いた。

箱の大きさは30センチ四方であらゆる国や民族の文字がぎっしりと彫られたもので、純銀製なのか

結構な重さだった。その箱を開けて中を除くと何も入ってはいない。これをどうしろと言うのだろう?

と思いながら、梱包に使われた袋や紐をゴミ袋に入れて、ゴミの集積場へと持って行った。

JRの岡本駅から国道二号線を越えて甲南大学までの間の商店街の奥まった古い3階建てのビルの2階。

昭和の高度成長期頃に建てられたビルなので、階段の角度が結構急で、ウチ壁には当時流行りのクレマヌォーバという大理石が使われている。ツヤツヤした珊瑚の化石からできだ大理石で、よく見ると貝の化石なども見つかられる。東京駅の一部にも使われているのと同じ石で、階段もアール・ヌーヴォーの螺旋階段とな美しい真鍮せいの手すりで、共用部分の窓は花のステンドグラスで、床もモザイクタイルで手の込んだ作りになっている。

しかし外観はのっぺりした真っ白な四角い建物。この場所はこのビル以外は周りが全半壊になったのに関わらずほぼ無傷で、震災後引く手数多だったにも関わらず、オーナーが堅物でなかなか貸しに出さなかった。

元がここを借りる事ができたのは、父の友人という家具職人の知人とのことで、あっさり借りられた。

近所の昔から商店街の人達はあの堅物親父が貸した相手はどんなだろうと思ったら、人当たり良さそうな青年だったという事でちょっとした話題の人になっている元だった。

 集積場の前にあるカフェに中国茶を卸していたが、店主が被災してから取引がなくなった。

そのさきにある昔からの文具屋も、ヨーロッパのアンティーク万年筆やレターセットやグリーティングカードなどを卸していた。震災後は線路の復旧にも時間がかかり人の流れが変わって、最近はほとんど取引もない。

震災が変えてしまった色々を思い浮かべながら、階段を登ってオフィスへ戻りドアノブに触れると金の指輪から電流が流れ体の血が一瞬熱くなった。静電気か??と思ってオフ椅子に入ると、紫色の煙が銀の箱から漂っている、

慌てて箱を開けるとタロットカードが入っていた。これを欲しがる人間か来るのか??と思った矢先、

オフィスの書類に埋もれている電話が鳴った。電話の相手は、グリーティングカードを卸していた文具店からだった、内容はタロットカードがあればほしいという内容だった。今丁度1セットだけならあると伝えると、購入したがっている人が直接こちらまで取りに来るというではないか。箱からタロットを取り出そうと開けると、タロットカードの横に小さなメッセージカードがあり、★他人を占う時の注意事項、高額な金銭を求めない、マイナスな意味が出ても内容を変えない。というものだった。

5分もしないうちにドアがノックされ、小綺麗な少年が入ってきた。

「君がタロット欲しがってる人?」

先入観で女性だとばかり思っていたで、少し驚いた。

聞けば、週末だけBarでバイトしていた時、お客の占い師にちょっと教わって、震災まではカウンターに立ちながら占っていたらしい、幼馴染に占ってと言われたもののカードはバーで全壊してしまい、大学の帰り道の文具店は輸入のグリーティングカードが置いてあったので、置いているかもと寄ったらしい。そういう経緯で、タロットを彼に託すわけだが、人の欲望をむき出しにしてし破滅へと導く可能性があるこのカードをキラキラした若もに預けて良いものか迷ったが、耳元で「迷わずに従えと」囁かれ、「じゃ、これを。」とタロットと一緒にメッセージカードを渡した。少年は代金を渡すとお辞儀して出て行った。

これから彼に何が起こるかはわからないけれど、ザワザワする心と、妙な好奇心が感情を揺さぶる。

この後元が彼と会うのはここから数年後になる。


実際に神戸には贅を尽くした古いビルが何軒かあって、そのほとんどは震災で亡くなり、その後耐震の問題で建て替えの為にもう殆ど残ってはいない。

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