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炎舞  作者: 百鬼繚
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炎命

1995年午前5時46分

淡路島北部が震源の大地震が早朝の神戸の街を襲った。

中心部の商店街やビルはズタズタに崩れ、朝の支度でガスを使う家庭や飲食店から

火の手が上がり、その勢いは時間が過ぎると共に大きくなって街全体を飲み込む程に勢いを増していった。

昔からある小さな商店街も同じく酷い有様だったが、幸い飲食店や住居に使う人も少なく建物の倒壊だけだった。

早朝から大地震に店主たちが集まっていた。当分商売は無理だし、片付けるとなると時間も費用もかかる。ならばと各々の店が商品を出して被災者の為に使えるものを集めていた。3代続く貿易商をしている宇壽山家も倒れてぐちゃぐちゃになった帳簿や輸入の茶葉が詰められた缶などを元に戻したりして終わりそうにない後片付けにため息を漏らした。ため息を漏らしたのは宇壽山貿易の跡取り息子元はじめだった。茶葉を置いた棚と帳簿の置いてあった棚が交差に倒れその向こうにある金庫へ行きたいのに、年代物でしっかりした木製の棚を元に戻すのも何人もの大人の力を借りないとダメなほど重く大きな棚だった。元はどうしても金庫へ行かなければならなかった。

金庫の中には結婚を約束した聡子に渡す為に大事に保管していた指輪があったからだ。震災のどさくさで盗難される事を恐れているのだ。実際この震災では強盗や盗難が多発していた。倒れた棚を下の位置に戻したら棚の下の方が破損して真っ直ぐ立てることができなくなっていた。支えになる物を置いてその場を凌ぎ、交差しながら倒れた棚を近所の商店の人たちと力を合わせてなんとか全て下の位置に戻すことができた。

「皆さんありがとうございます。」元は礼を行って金庫のある部屋へと入って行った。

その頃隣の喫茶店の厨房から都突然火の手が上がった。地震でガス管が破損していて引火し爆発が起きた。

爆発した箇所は

元が入った金庫のある部屋の真横で、大きな音と同時に隣接する薄い壁が割れ元の衣服に火がついた。

火に包まれながらあけた金庫を閉じようとてを伸ばすと、金庫の奥から金色の指輪がころげ落ちてきた。

元が聡子に買った指輪ではない、父の代には既にあった金庫の守り番のような指輪だった。その指輪から

声がした。服を焼き皮膚を焼き、喉や肺に熱い気体が入り酷く苦しむ元に

「生きたいか?」

「生きたい」

「では契約を結ぶか??」

「結ぶ」

喉まで焼けそうな熱さの中で声を振り絞った。

元は何かわからなかったけれども、確実に死が待っている状態ではそう答えるしかなかった。


薄れていく意識の中で、元は真っ暗な階段を下っていた。足を進める分だけ小さな火がともり消えていく

階段の底に間で着くと神社の参道の様な道が見え炎が着いてガイドする、炎に誘導され真っ直ぐ進んでかなり時間がたった頃、鼻を突く様な濃いアルコール臭がすると同時に薄暗い光がさし、見たことない豪華な金襴緞子の衣装を着た長身長髪髭面の男性が経っていた。

「よく来た。行きたいと請うお前を助けてやった。これからお前は

私が授けた命が続く間私の僕として働くのだ。簡単な事だこの箱の中にある物を欲しがる人間に与える

それだけの仕事だ。私の計画を手伝うお前の報酬が命だけなど私はケチ臭くない。忠誠を誓うお前に富と名誉も与えよう。この箱の中の道具を与えた人間は命を削りながら欲望を満たすだろう。けして情けを持つな。

人間の強欲嫉妬憤怒全ての業が私の好物だ。お前の命が滅びるまで我に仕えよ。さぁ行け」

その言葉を聞いて目が覚めるとベッドの上に寝ていた。


顔を覗くように見つめたのは号泣する元の母だった。

「良かった、良かった…もうダメかと思ったわ…

結婚指輪くらい買い直せば良かったのに…死んだら意味ないじゃない」

号泣する母にもらい泣きしそうになる元。ところが涙が出ない、そのかわり左手の手のひらが熱くなり

握っていた手を開くと金の指輪が転がった。落ちた指輪を母親が拾うと焼ける様な熱を持っていたようで

触れないという。管が沢山着いた体を起こして、拾うと元には熱くない。指輪は金無垢の重厚感のある指輪で

蜂の細工があった。それを何故か薬指にした途端、体の中を何かが駆け巡った気がした。

母親の話だと爆発が起きた直後に余震が起きて棚の下敷きになっていたらしい。

機密性の高い木で製造された棚のお陰で奇跡的に焼死を免れたらしい。しかし元の記憶では衣服に火がついていた筈なのだが

母親が言うには衣服も煤けた程で、救助に入った消防士も経験がない状態だったらしい。

元は検査と体力の回復に1週間ほどで退院した。

会社は焼失し兎に角ほぼ0の状態からのスタートだった。






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