表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
99/118

オート5

 望遠鏡と段ボールと化粧用の折り畳み式鏡を使って、測距儀を作った。


 測距儀というのは……なんだ、双眼鏡のお化けみたいなものだ。本来では、砲撃の照準及び、対象との距離を計るのに使う。


 ところで、我々人間が距離を計れるのは目が前に二つ付いているからだ。左右の焦点の交わるところをその距離として認識する。つまり、通常の望遠鏡や双眼鏡には問題があって、対象の距離に対して目が近すぎて距離がわかない。


 そこで測距儀は、左右に目を伸ばしたような間抜けな形をしている。海洋生物が好きなひとには、ハンマーヘッドシャークのようだと言えば一発で伝わるだろう。


 そう言えば、もうひとつ問題がある。一般男性であるところの俺は、身の丈180cmあまりであって、残念なことにこれでは2kmほどの距離しか視界がない。なぜなら地球は丸くできているので遠くに行くほど地平の向こう側に消えてしまう。


 だから測距儀はこの茨城で特に高い所に設置しなければならなかった。


「農家さん頭おかしくなったの!?」

「俺はいつだって正常だ。おかしいのはこの世界の方なのだが、どうして誰も理解してくれない。分かる?」

「最近農家さん敬語使わなくなったよね」

「俺は親しい人間には敬語を使わないのだ」


 ニヤリと笑って見せたのだが、ダンゴムシ君は肩をすくめただけだ。今日も上手なコミュニケーションをとれたな。100点だ。


 一番高いのは鉄骨塔の上。なんと48メートルも上がらなければならない。

 そこからの景色は絶景だった。遠く、緑の筑波山から雪化粧をした富士山まで見える。

 ここからは畑が見えて、そこに人の姿もあった。


「ダンゴムシ!人が見える!」

「ええ!?なんて?」

「人!人!人!」

「だからなんて?」

「もう、聞こえない……」


 人々は10人ほどの集団を作って歩いていた。そう歩きだ。なぜなら彼らは車を持っていなかったから。もしかしたら持っていたのかもしれないが、ガソリンが切れたか、タイヤがパンクしたか。どちらにしろ彼らは車を持っていない。しかし俺は持っている。


 朝方畑に入り込んだ若いメス鹿をぶち抜いて軽トラの荷台に乗せたままだった。


「やあ、みなさん。今日は残念な雨ですね」

「それ以上近づくんじゃねえ!!」

 おや、おそろしい。銃だ。銃を持っている。

 こちらも当然ながら持っているが分が悪い。なぜなら相手はブローニングオート5を持っていたのだ。この銃は傑作的な銃で、ak47の機関部のコピー元、さらには、あの天皇陛下までもが使用した実績のある銃だった。

 古めかしい設計だが、別の言い方をすればエレガントで、美しい。


「やぁ、良い銃をお持ちだ。私も持っているのですがね、随分みすぼらしい銃でして」

「聞こえなかったのか!?近づくんじゃねえ!!バカか!!!」

「そんなにいきり立たないでください。私は貧乏な農家ですから、みなさんの姿をみて、お助けできるんじゃないかと、思っただけなんです」

「うっせぇデブ!ぶっ殺してやる!」


 ドボン! 音が響いて、俺の手の中の筒から煙が上がっていた。

 男の頭の上で袋が破裂したみたいにケチャップが飛び散って(より正確には血の付いた肉片と脳ミソだが)それで終わりだった。


 そそくさと俺は近づいて銃を拾い上げた。


「おまえにはもう必要ないだろう。良い銃をお持ちだ。是非金で買いたい。」


 ちゃんと相場を調べた。これは高い銃であった。中古で16万5000円である。その場でキャッシュで、男の胸に捩じ込むと、彼らの仲間がひどく怯えたような表情をした。


「ふざけやがってぇ!」


 側面のレバーを引いて、初弾を装填する。既に装填されていた一発が弾き出され、次の一発が薬室に。ああなんと精巧な工業製品か。引き金は使いすぎてブルーイングが剥がれている。その羽のような軽さ。

 ボバン!目の前の何か叫んでいた男の足が吹き飛んだ。おお。実弾!威力からしてダブルオーバックだろうか。こんなものをだね、人に向けといて、本当に酷い。


「ううううううーー!!!!」

「うるさいなぁ」

「痛い痛い痛い痛い痛い、俺の、足!!!」

「だから黙ってくれ。なんで君たちは、人に銃を向けておきながら、自分は撃たれる覚悟がない?そりゃおかしな話だ。でしょう。みなさんもそう思う?」


 死んだ男の仲間達には、どういうわけか、紐で両手を縛られてた。


 それを見て、つい、カッとなって引き金を引いた。

 ボン!くぐもった銃声は頭に直接銃口を付けて撃ったから鳴ったのだ。ブローニングオート5。こいつは、半自動式。引き金を引けば次が出る。問題はそう。それを使う人が、人を殺すつもりで持っていなかったことだ。我々はまだ自分の意思で人を殺すのである。道具によってではない。道具はその行為そのものを簡単にするだけだ。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ