たすけて!
ホッ、と一息ついた所で、現在の状況について頭が回ってきた。
目の前の惨状、生きとし生きるものが全てその、赤々しい肉を広げて、可憐なるバラのような有り様となったコレを、我が家の女の子は見れる位置にいたのだった。
教育上悪いなんてものではない。下手をすれば人格が歪む。サイコパスになるのではないか。
幸いにも立ち位置的には俺の後側に立っていることから、直接に目に飛び込んできた訳ではなかろうかと、淡い希望を持ちながら振り向くと、目をかっぴらいた彼女がいた。
「……見た?」
「見た」
「頼むから、見てないって言って!」
うわ、不味いって!
嘘つかなきゃ。
俺は殺したことよりも、仲間に見られた事をひどく心配しているのだった。
アバババ、!!!口が回らん!変な汗が滝のように背中を伝ってパンツまで濡れる。口のなか渇く。心臓が口から飛び出して爆発しそう。
緊張する。次の一言が今後の関係を決定づけ、いやそればかりか、身じろぎひとつが全てメッセージになり得るかもしれない。人を簡単に殺せる人間がいるという事実は誰も知らなくて良いことなのだ。そして死を誤解する必要もないはずなのだ。
「……きが」
「?」
「気がついたら倒れててぇ……。あーまた俺やっちゃったのかぁ。キリイトかな~やっぱ」
首をかしげた。
全然騙せていない。終わった!人生終わった!!!
短く、幸せな、人生だった。
アワアワとせめて彼女の目を手で覆ったのだが、当然その手は血にまみれ、真っ赤な蝋人形みたいだったし、そのさなかにも、彼女は一切まばたきをしないという、そのような状態だった。そのガラス玉のような瞳を、夏の夜を切り取ったような瞳を、親指で潰すことなど造作もないというのに、信頼しきって抵抗すらしないのだ。このか弱い生き物は。
「農家さんのあれ、何? 気になる。何?」
「何も見なかった!!!!何も見なかったんだよ!!!」
子供の好奇心というのは恐ろしいものがある。目を塞いでいるのに、指の間からわずかばかりに差し込む景気を必死になって記憶しているらしかった。
どうすりゃいいんだ!助けを求めてダンゴムシ君を見たが、吐きまくってて全然役に立ちそうにない。彼はこういうのダメらしい。うーーーん。ここ一番たすけて欲しいのに!




