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血と油

 俺には連絡をとってくる程の友がいない。

 いや、友達はいる。いるのだが、メールやSNS で連絡をとってくる程の友達がおらず、スマホはもっぱら充電するだけの板となっていた。


 当然電気を無駄に食うので電源は切っていた。

 発電機があるとはいえ、それを運用するのはタダじゃない。実際には、キャブレータの掃除、燃料配管の交換、給油、マフラーの掃除など維持するのも大変な苦労がある。誰だ!あんなめんどくさいものを非常時用として売り出したバカは。俺はまだ機械が触れたから良かったが、一般人は誰もあれは使えないぞ!そもそもだ。キャブレータをボルト1本に至るまで完全分解しないと掃除できない構造なんて設計しちゃいけない。いったい誰がアレを運用できると言うのか。多分俺くらいの汎用性がないと付いていけない。こういうものがあるから、災害時に予備電源がなくなるのだ。実際それで死人も出ているというのに、いっこうに改善されていない。

挿絵(By みてみん)


 本当にもうポンコツ。これで発電機は大陸製品と言われればなっとくなのだが、日本製。大手も大手、名前を聞いたことのない人はいないというくらい有名な会社が作った代物だった。


 これを信じて買った人には、沢山死んだ人がいたであろうな、という感じである。パッケージに書いておけば良いのだ。『これを扱うには草刈り機を分解組立できるだけの技能が必要です!』ってな!


 だったら皆30万も出して場所を取る鉄の塊を買おうなんて思わないさ。

 それにしても、それにしてもだ。


 世界が終わったのに、自分の家だけは電気を煌々と付け、ネットサーフィンをするという娯楽を感受できなかった人がいるのが悲しくてしかたがない。


 もし困っている人がいれば、その解決方法を教えて差し上げたい位だったが、いかんせん、俺には連絡をとってくる程の友がいない。


 学友達は、殆どが俺と同じ学習科目を必修でとっていたので、よほどのバカじゃない限りは聞いてこないだろうしな。


 おいおいマジでどうするんだ。

 日本はいつのまにか性能の低いものを普通に売ってしまうような国になってしまった。あの技術大国が。隣の大国に人件費で負け、技術を盗まれ、最後には災害にまで会う始末。世界からの援助はまだない。あれほどばらまいていた日本から海外への義援金等は帰ってこなかったのである。


 その皺寄せを俺達国民が受けているように思う。


 政府は早くなんとかしてくれ。早くなんとかしないと本当にやっていけなくなる。まだ間に合うなんて言葉はとてもかけられない。俺達は今、血を流している。


 その血は、税金であり、金であり、時間だ。その使い道が間違っているのだ。

 もっとシェルターがあれば助かった人もいたかもしれない。もっと備蓄があれば、飢える人はいなかったかもしれない。たった一枚のクッキーで助かった幼児がいたかもしれない。たった一口の清潔な水で助かった命がどれだけあっただろうか。


 11月13日。まだ冬は開けない。

 冬は毎年、救急車のサイレンが鳴り響く。冬は良く人が死ぬからだ。だが今年は耳がいたいほど静かだ。


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