懸念点
3層コウモリ
4層角ウサギ(ホーンラビット?)
二つの層を一気に突破したが、感覚的に不味いと感じる物がある。
俺にとってはこの程度の魔物は相手にならない。
伊達に10年以上グラディスの指導を受けていない。
だが・・・恐らく一般人だとコウモリに勝てるかどうかという話になるだろう。
奴らは集団で襲い掛かってくる。
攻撃手段は噛みつきしかないが、その噛みつきが厄介なのだ。
態と噛みつかれてみたが力的には大人でも振りほどくのが難しい。
集団で襲われたらひとたまりもない可能性が高いとみた。
「厄介だな」
『人の身には厳しいでしょうね。慣れれば脆いから簡単でしょうけれど』
「自衛隊は銃があるから何とかなりそうだが」
逆を言うと本当にまともに戦ったことのない一般人では厳しいだろう。
当然その下の階層にいる角ウサギはもっとまずい。
凶器となる額の角がヤバすぎる。
恐らく人間程度なら簡単に貫通する。
突撃の速度を考えれば・・・まぁ死ぬな。下手したら一撃で。
死にはしないが致命傷となりうるのはもっと簡単だろう。
しかい恐ろしい事に・・・ここまではチュートリアルとしか言えない。
5層に踏み込んだ瞬間にそれを理解した。
「草原と来たか・・・」
『迷路は迷い層だけれど、これはそもそも帰る場所が分からなくなりそうね』
「限界はあるんだろうが、それがどこになるんだか」
どこまでも広がっていそうなほど広大なように見える草原。それが5層の環境であった。
ヤバすぎるだろこれ。控えめに言って馬鹿じゃないかってくらいだ。
真っすぐ進むだけでも一苦労だぞ。
そしてこの5層の厳しさはそれだけではない。
ここに現れる魔物も問題だった。
「ゴブリィン・・・」
『相変わらずの見た目ね・・・あ、これがキモイってやつね?』
「そうだけどそうじゃない」
5層の魔物は緑の人型魔物・・・ゴブリンだった。
何も持っていないがこちらも複数で現れる。
大体3~6の群れといったところか。
このゴブリンの何が問題なのか。
まず一つ見た目だ。
明らかに人間ではないとはいえ、人型なのは変わりない。
攻撃する時に一瞬躊躇するのではないかという点が不安点だ。
まぁ俺は問題ない。そこのあたりの認識はしっかりとグラディスに矯正されている。
だから頭を握りつぶしたり、体をばらばらにしたりすることに抵抗はない。
だが普通の人は違うだろう。
人によっては武器を向けること自体に抵抗を覚える人もいるかもしれない。
自衛隊でもその辺りは問題になりそうだ。
次いでこいつらの強さも問題だ。
コウモリは二匹いたら大人を殺せるだろう。
角ウサギは一匹で殺せる。
だけど大人側が二人以上いたら恐らく怪我はするが死にはしない。まだ何とかなるレベル。
でもゴブリンは恐らく、一匹いたら複数の大人を殺せる可能性がある。
それも素手で殴り殺しにする形で。
そんなことを考えながら近くのゴブリンの首に作り出したナイフを差し込む。
「ぐぎゃ!?」
「キモイ」
そのままナイフを蹴り上げることでゴブリンの首が吹き飛ぶ。
そこで止まらず今度は棍を生み出し背後から近寄ってきていたゴブリン2体を叩き四散させる。
最後に残ったゴブリンには棍を槍に変えて投げつけ串刺しにした。
ゴブリンの死体が消えて魔石だけが残る。
先ほどからゴブリンは何体も倒しているが魔石以外は残さない。
そういう魔物なのだろう。
「やっぱり俺は苦戦しないか」
『この程度で苦戦するようなら怒るわ』
「こっわ」
まぁ相手で言えばグラディスの方がよっぽど強いから怖いのは当然なんだが。
だが考えるのはそのことではない。
一つ懸念というか、やばい考えが浮かんだのだ。
このダンジョンの中にいるモンスターは入り口は階段付近には近寄ってこない。
恐らくそういう法則があるのだろう。近寄れない様な結界があるようには見えなかったが。
この結界が無いというのが問題なのだ。
魔物の習性で近寄らないだけならかなりマズイ。
考えすぎかもしれないが・・・魔物があの門から外に出てくる可能性がある。
『内部で魔物が多くなり過ぎた場合』
習性に限らず広い空間を求めて外に出てくるかもしれないという可能性を思いついたのだ。
「どう思う?」
『ありえるわね。というかあると考えて良いと思うわよ』
「最悪だな。どのあたりの魔物が出るかにはよるだろうが」
『あと出てくる数にもよるわね。1000体程度でも角ウサギ辺りなら死人が出かねないわ』
「・・・どうするかな」
もし被害を抑えたいなら。
家にほど近いこの門を常に見張っておく必要がある。
だが俺にも生活がある。何より数日後には高校生活が始まる。
中学自体は鍛錬でまともに学生っぽい事が出来なかったので楽しみなのだ。
それがまた出来ないとなると・・・流石にモチベーションが上がらない。
『なら警察にここの事を教える?』
「無いな。そもそも警察で対処できるなら俺が見張る必要もない」
『それはそうね。ならやるしかないじゃない』
「はぁ・・・いや。一応定期的に俺が中で暴れればその限りではないか?」
『うん?・・・いやそうね。そうだわ』
数が増えると溢れる可能性があるというなら、増やさなければいい。
グラディス曰くダンジョン内の魔物は根絶やしにすることは出来ないが、数を減らすことは出来る。
なら内部で戦い数を減らし続ければ外に出てくることは無くなるのではないだろうか。
『まぁあくまでも外に出てくるなら、という話ね』
「だが出ないとは言い切れない。つまりは」
『他のダンジョンも含めて、様子を見ながらここだけは狩り続けるしか無さそうね』
「・・・高校デビューってのは、出来なさそうだな」
『放課後ダンジョン日和じゃない。良かったわね』
「ちっとも良くないが。ハァ」
ため息ばかり出てくるなぁおい。
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